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新弥のDAYS'
2006年03月06日更新嫌なことを言う
<嫌われ者になる凛々(りり)しさ>
サッカーのRマドリードが注目されている。
6日付の日刊スポーツが伝えるように、不振のレアルのペレス会長が辞任、FWロナウドをはずしてやっとダービーマッチで勝利をつかめた。
前会長は「選手を甘やかしすぎた」とコメント。これに対してスーパースター軍団は反発したが、熱狂的なファンの一部は別にして、世間は会長の言う意味を理解したようだった。
新会長も「億万長者はいらない。一流のプロは必要だが、ここは退職金稼ぎのショー・チームではない」と手厳しい発言をしている。嫌なことを言うおやじだ。一番放出したいのはロベカルだという。次がロナウドとか。とんでもねえことを言う(笑い)。けれど、こういうおやじがいなければ、このチームはいくらでも谷底へ落ちていく。
そう言えば、嫌なことを言うおやじが、最近は少なくなった。
昔は、おやじたちがうるさかった。
僕も会社に入ったころは若かったから、相当に恥知らずだった。いろいろ言われたものだ。「なんだ、お前はスポーツカーで会社に通ってきたりして」(乗用車だろうがなんだろうがいいいじゃないか)。「先輩同士があだ名で呼び合っているからといって、後輩があだ名にさんをつけて呼んでも言い訳ではない」(ヤマさん、と呼んで何が悪いの)。「記者会見の取材は背広で来い」(なんで? 業者じゃないよオレは)「先輩に話すときにはオレといわず、私とか、せいぜい僕といえ」(オレで何が悪いの)。「コンチャだのウーッシだなどと、業界風の挨拶をするな。腰から上体を曲げて、きちっとあいさつしろ」(なんでいちいち、お前みたいなバカに頭を下げる必要がある)。
今は、なぜそう言われたかよく分かっているが、そのときは腹が立ち、わざとまた「いけない」ことをやったりした。それが若いということで、生意気さも大事ではある。ただ、もしそういうくだらない(?)ことを、嫌なことを言ってくれる人がいなかったら、自分はもっとガサツで、ものごとを一方からしか断定することのできない、およそジャーナリストに似つかわしくない感性の持ち主のままだったと思う。
嫌なことをきちんと言うのは勇気もいるが、やっぱり必要なのではないだろうか。
92年アルベールビル五輪で、複合チームが劇的な優勝を遂げた。日の丸を振りかざし、表彰台でシャンパンをかけ合った。これを「行儀が悪いのではないか」と指摘した一般紙の記者がいた。当時は僕も世間も、圧倒的多数で選手の味方だった。選手は取材拒否を宣言した。
トリノ五輪で、スタート前から「オレがオレが」とにぎやかな、いわば「いいノリをしている」タイプの内外の選手達が、軒並み不振に終わった。それを見て、ふっとくだんの論争を思い出した。
「ああいう発言は、もしかしたら貴重なのではないか。間違っているかどうか以前に、そういう異種の論点が入り、論議が行われ、みんなの心のどこかにそういう問題が残っていくことで、スポーツは自らの軌道を自動的に正しく保たれるのではないか。単なるその場の多数決だけで歴史が進むより、あえて一石を投じる発言を踏みながら、歴史は進むべきではないか」。
2位3位になったチームへの配慮を含め、あれはあれで良かったことは間違いなくとも、実際には「やりたい放題でいい訳ではない。以後はもう少しだけ、慎む気持ちも持った方がよいかも」という風に、みなが思ったのではないかとも察するからだ。
野村監督が他チームの監督の無精ひげを見て、「どこのゴロツキだ」とほえたそうだ。これは、どうなんだろう。ひげ面を悪いとは言えないが、「野球に関係ない」と言い切れるかどうかを含め、面白そうなけんかだ。
いつも嫌なことを言うサッカーの中田が、最後は頼りになった。彼には、嫌なことを言う凛々(りり)しさがある。
フィギュアの荒川も「メダルが欲しかったのではない、自分のベストを出し切りたかっただけだ」と発言した。聞き逃せばそれまでだが、メダル至上主義の世間に対する彼女なりの、スポーツなりの発言だったかもしれない。
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、59歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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