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新弥のDAYS'

2006年3月19日更新

日本リレー縦断ゴール

<チームホライゾンが佐多岬に到着>

 19日午前8時30分、平成国際大学8人を中心とした日本リレー縦断の「チームホライゾン(地平線)」が、サクラ吹雪の舞う佐多岬に到着した。電話で報告を受けた。

 歓迎を示すような晴天。強風にサクラの花びらが舞っていたそうだ。

 --3月6日午前6時2分に、最北端の宗谷岬を出発して14日目。北の果てでは猛烈なブリザードにランナーは何度もよろけて、「カニのように横走り」したが、今度はサクラの花のブリザードだった。ラストを受け持った風間悠平が頑張り通してゴールすると、南大隅町の小学校の児童たちが「おめでとう」の幕を用意して待っていてくれた。町長以下の「おめでとう」に、疲れを忘れた-。

 通算距離は予定より30キロ延びて、2960キロだった。

 途中の盛岡=仙台間の10キロは、筆者が担当した。

 「取材に来るなら、走っちゃいなよ」と誘われたからだ。

 感動だ、勇気だ夢だといった修飾語で何かを伝えるのは容易だし、そういう「外側から見たスポーツの印象」の方が、やはり同じく外側から観ている世の中の一般の人には、理解しやすい。受けがいい。

 けれど、それではスポーツに手垢が付き、いつも同じ話になりがちではある。

 内側から内側を伝えることも、並行して重要だと思う。

 長距離を走るのは苦手だが、ともかく10キロを走った。

 この企画は平成国際大学陸上部員だった4年生が、箱根駅伝の予選会で1分29秒足らずに落選し、その悔しさを「何かにぶつけたい、僕たちはまだ走りきっていない」という動機から芽生えた物だった。

 その気持ちはすばらしいが、一方で「悔しさ」もとても大事だ。箱根駅伝に及ばなかった事実を一生胸に残し、悔しさと友に生きることは、決してマイナスだとは思わない。

 事実、山岳ランやマラソンの世界で」活躍している社会人の多くが「箱根に出られなかった悔しい思い」を、勝利の後で打ち明けたりしている。

 この企画の相談を途中で受けたとき、最初に伝えたのが、そのことだった。

 大学側と若干の行き違いもあったと聞く。

 また周囲には「やることを、やるべきときにやらないで、なんだ、そんな大それた話を持ち出して」といった、大人から見ればそれもまた自然な批判も受けた。

 挫折しかかったとき、父母たちがアシストに立ち上がってくれた。

 リレー縦断の費用は300万円を超える。ランナーたちは1人20万円を工面したが、それでも足りない。父母が走り回り、さいたま市の有志の寄付も集めてくれた。

 苦難の道だった。

 けれど、その苦労や悩み、「ただ走ればいいというものではない、組織や社会、学連との整合も考えなければならない。ルールではなく、気持ちが大切なのだ」といったことを、ランナーたちは体験した。

 陸上部出身であることは、名乗らずに走った。各地の市長や、へぼな新聞記者を巻き込んで、一般的なチームとして走った。

 大きなことをなし遂げた8人に、心からエールを送りたい。

 同時に、この歓びで「箱根の悔しさ」「走りきらなかった悔い」を消すことなく、この両方を胸に持ち続けて欲しいと願う。歓びが大きければ大きいほど、悔しさも大切にして欲しい。

 父母の1人に、風間深志さんがいる。バイク仲間としては親友の部類である。

 一昨年のパリダカで重傷を負い、今ようやく松葉づえで歩けるようになった。風間さんがほとんど、伴走のバスを運転した。

 盛岡で10キロを担当したとき、走りながら「ああ、風間さんだって走りたくて仕方がないのだろうな、でも彼はまだ走れないんだ」と思うと、涙が出てきて仕方がなかった。走ることは苦しかったが、その苦しさを味わえる自分と、車を運転し続ける彼を考えると、苦しいなどとは言えなかった。

 彼のために彼の分まで走ろうと、懸命に走った。わずか10キロだったが、一生忘れない10キロになりそうだ。

 そういうドラマをいくつもいくつも引きずりながら、チームホライゾンは日本を走り抜き、ゴールした。

 おめでとう。

 WBCの快挙もうれしいが、宗谷岬から佐多岬への足跡もまた、1つ1つが感動である。

 ランナーは23日、卒業式に出る。

 佐多岬から先に続く道を、彼らはどう走っていくか、楽しみだ。

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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、59歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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