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新弥のDAYS'

2006年4月22日更新

杉原の心技体=>笑

<68歳で「つるやオープン」予選通過>

 本当のプロというのは、どういう選手をいうのだろうかと、最近よく考えさせられる。

 昔とは価値観が異なるから、おやじやおじじ世代がよしとすることを世の中は拒否するし、極端な場合には世の中がもてはやすことに、古い世代は顔をしかめる。

 野球の清原選手が死球を受けて、烈火のごとく怒り、まだ怒っている。当然だが、少し怒りすぎだ、という声もある。

 古い世代から見ると、「死球は野球の一部で、ぶつけられたときにどう出るかはそのときの雰囲気や、他の味方への心理的影響もあるから一概にはいえないが、基本的には武士のように平然と受け入れるのがプロのあるべき姿ではないか」というのが、一般的である。

 ぶつけられても顔色1つ変えないような男こそ、男の中の男という価値観の時代があった。

 日刊スポーツは22日付で、王監督が「昔はぶつけられた方が悪いのだと言われた」というコメントを紹介しているが、闘将清原の怒りに男を感じる人もいれば、王さんの言葉にほっとする人もいるだろう。

 

 そうした中で、ゴルフの杉原輝雄(敬称略)が、68歳にして「つるやオープン」2日目の予選を突破した。

 あと1打でエージシュート(年齢と同じスコア)となる、69の好スコアだった。

すごい。うれしい。

 筆者が初めて現場記者としてゴルフ場に行ったとき、右も左も分からずにうろうろしていたら、トイレで小柄なおじさんとぶつかった。謝ったら、向こうがもっと丁寧に頭を下げた。その10年も前に日本オープン(62年)を制していた、杉原さんだった。

 その後がんとの闘病でも有名になったが、ジャンボ尾崎、コンコルド青木といったパワー・プレーヤーが出現した時代も、絶対にあきらめなかった。

 当時は正確無比なショットで大型プレーヤーに対抗していたが、かと言って「小柄だから(162センチ)飛ばせない、だからショットの正確さや小技で勝負するとは思ってほしくない」という意味のことを、しばしば冗談交じりに主張した。右腕(ひじ)を曲げたままのスイングは特徴的だったが、それも「ゴルフは飛ばさなかったら勝負にならん」という「言い訳無用」の哲学から生まれた打法だった。

 実際ジャンボほどは飛ばなかったが、「飛距離では劣るが」という記事表現をよしとしなかった。わしは飛ばし屋だ、と言ったこともあった。

 むろん雨でも降ればめっぽう強かった。「ゴルフに雨や風は付きもの」という姿勢。ゴルフに年は関係ないという姿勢。病気ならだれでもかかるのだという姿勢。パワーや体格は関係ないという姿勢。

 そういう、すぱっと割り切った生き方、勝負のあり方が、とても好きだった。どの選手が好き、嫌いと分けるのは現場のジャーナリストとして失格だが、杉原さんは心底尊敬したプロだった。

 あまりにも真面目で、真剣で、だから杉原さんは冗談が多い。

 

 日刊スポーツ22日付けで木村記者が紹介しているが、今回も記者団を大いに笑わせたそうだ。

 終了後、久々の記者会見で、まず「通訳を呼んで」。

 「気力の源? お金や」

 「残り2日? (予選通過とは思わなかったので)もう彼女を帰らせてしもうたわ」

 是非、もう一度紙面に目を通して、笑って頂きたい。こういう記事のためにこそ、新聞はあるのだ。

 ひょうきんな性格とは違う。

 あまりにも人生やゴルフに真剣だから、仕事が終わると本人が楽しいのである。時の流れを楽しめるのである。

 心技体、極めれば「笑」の一字だ。

 そういう人が、予選通過を果たし、まだまだ現役で活躍している。

 スポーツはすばらしいと思う。

 おお、杉原がねえと感無量のおやじ、おじじも少なくないだろう。

 感動を、分かち合いたい。

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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、59歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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