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新弥のDAYS'
2006年5月20日更新稲垣さんが48時間走世界新(1)
<24時間走世界選手権に続く快挙>
5月12~14日、フランスのスージェで第21回48時間走国際競技大会が開催され、女子24時間走のアジア記録保持者の稲垣寿美恵が、日本人女子として初めて優勝。加村が女子で5位、沖山は男子8位に入賞した。
稲垣選手は、382・416キロを走り、9年ぶりに全カテゴリーを併せた総合の歴代世界記録を4・5キロ余り更新する快挙を成し遂げた。
(www.48heures-surgeres.net)
稲垣選手の専属サポートとして参加した「24時間走チームJAPAN」井上明宏代表に、本欄のために特別レポートを依頼。いただいた報告書を土曜日、月曜日と2回に分けて掲載します。
日本の女子マラソンは五輪でも注目を集めているが、すでに「実際のランナー」たちはウルトラマラソンで世界の壁を突破している。
一般のテレビやマスコミで報じられない快挙。けれど、これこそ「日本のランナーの真実」だ。
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***井上明宏監督の報告***
今年で第21回の開催を数えるこの大会は、大会主催者による指名招待によって厳選された世界のトップウルトラランナーのみが出場する賞金レースです。今大会には7カ国から男子10名、女子12名、日本からは男女の48時間走アジア記録保持者である沖山健司と加村雅柄(ともに24時間走チームJAPAN)、それに24時間走のアジア記録保持者の稲垣が招待を受け、私は日本チーム監督と稲垣の専属サポート兼コーチとして参加しました。
一般には前半24時間は力を温存しつつ、後半はいかに休憩時間を減らしつつ最後まで集中力を切らさず大きくペースを落とさないようにするかが鍵だとされますが、世界のトップレベルで競うためには、前半からやみくもに力を抜いていくわけにもいきません。稲垣のタイプとして、24時間走では前半からある程度ハイペースで走り、後半に我慢してペースダウンを抑えて好記録を出してきましたが、そのパターンが初の48時間走でも通用するのかどうか、もしうまくいけばきっとすごい記録が出るに違いないと思わせる反面、2日目はつぶれてしまって動けなくなるかもしれないという不安も交錯しました。
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さて、1周301・59メートルの砂地のオーバルトラックに夕方4時スタートという一般的ではない条件の中、レースのフタを開けてみれば、稲垣は24時間走より少し遅い程度のスピードでコンスタントに周回を重ねていき、48時間という長さを意識してペースを落とす周囲を尻目に20時間の時点で男女総合トップに躍り出ることになりました。
そのままほとんど止まることなく24時間を自己記録(237キロ)から約5%減の224キロ(平均時速9・3キロ)で通過したところで、後半を平均時速6・5キロ(速歩きのペース)でカバーすれば377・892キロの世界記録(スーアラン・トラップ=米国・1997)に届くという机上の計算が成り立ち、そこからはいかにその平均時速を上回って粘り続けることができるかがポイントになりました。
しかし中間地点ですでに体力的には余裕はなく、30時間を過ぎた2晩目になると睡魔と疲労でフラフラになり、意味不明なことを口走ったり、幻覚を見たり、蛇行したり、知らないうちにコースアウトしてあさっての方向に走って行ったりするなど、頭と体のコントロールが効かない状態に陥ってしまいました。
24~36時間には5~15分ほどの休憩を計4回とってみましたが、頭がボーっとしてペースが上がらない状況が続いて効率が悪かったので、ついに38時間で思い切って30分の仮眠をとりました。これは賭けでしたが、幸い吉と出てそこから数時間はペースを上げることができ、がぜん世界記録更新が現実味を帯びてきました。42時間で激しい追い上げを見せたドイツ人の男子選手に総合1位の座は奪われましたが、その彼と女子2位でペースを上げるロシア選手と併走することによってうまくペースを維持して、ついに46時間半で世界記録を超えることができました。
(月曜日付に続く)
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【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥
- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、59歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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