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新弥のDAYS'
2006年5月28日更新ジーコの正々堂々
<Jビレッジ日本代表の合宿の印象から>
少し前の話だが。
先週の日曜日に、日本代表の合宿をかいま見る機会があった。
「なんか、中田と他の選手と折り合いが悪いって話もあるけど、代表のまとまりは大丈夫なんですか」といった質問をファンから受けた。
サッカー担当の現場記者ではないから責任のある答えはできなかったが、
「折り合いが悪いって、どういいうこと?」と聞き返すと、
「つまり、意見が合わなかったり、互いに考えていることが違ったり」。
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そのような事実があり、そのように報じられている。
「でも、常識で考えてごらん。そのために合宿があるんじゃないの?」と言うと、「ああ、そうか、そうなんだ」と、大変に感激された。
すりあわせの必要があるから試合の前に合宿して調整するのであって、初めから一枚岩なら、合宿はしなくていい。
そういうことだ。
むろん、人間だから個人的な好き嫌いはあるが、肝心なのは試合の場でどうするかという1点である。
よしんば合宿中に分裂しても、別にそれはそれでいいではないか。メキシコ五輪で銅メダルをとったとき、全日本のFWとDFはけんかばかりしていた、とも聞いている。紅白戦でFW組対DF組の試合をすると、あまりの激しさにコーチ陣が目をおおったとも。
強いチームはたいがい仲間割れしているし、勝った後も、いっときは互いに肩を組んではいるが、内心は試合前と変わらないのが普通である。童話ではあるまいし、「みな反省して、1つになったから勝てた」などという話より、互いに激しいライバル意識があって、それがいざというときのエネルギーにもなった、という話を聞くことの方が多い。
もっとも、今の日本代表はまだそこまでは強くない。
全体の仕上げ方には、日刊スポーツ本紙ですでに報じたまさにその通り、さすがジーコという説得力があった。ドイツ入りへのプログラミングは非の打ちどころがない。
ジーコ監督自身、体調のよいとき、わるいときを経験している。コンディションを重視し、いきなり全力のキャンプではなく、まず体力・体調を原点から(リセットして)作っていこうとした方針は「なるほど」とうなずかされた。
そうした中で、Jビレッジでの中田はやはり輝きを持っていた。何でもない、合宿最初のリラックスしたシュート練習が行われた。「アスリート」を観る目で見ていると、その中でも中田の俊敏さは目立っていた。特に動き出し(初速)が際だって速かった。いきなりオフバランスに体を持って行き、そこからバランスのオンとオフを速い速度で切り返しながら走っていた。
「リラックスして」という了解事項だったがボールに向かうときの目や手先の動きは本番モードの動きに近く、トラップしたボールも足下から離さなかった。
さすがである。
シュートの確率は、本人が話したように「まだ体が完全にはできていない」とのことでそれほど良くはなかったが、さまざまなメニューの上がり3~4本は必ず連続して成功させていた。数値データに出てこない「中田流」だった。
これなら、まず大丈夫だろう。
人様々だが、筆者は
①中田のチームであること
②中田、小野、中沢、宮本が健在であること
③ジーコ監督が最後まで強気で押し通すこと
などが、この代表の決勝トーナメント進出のポイントではないかと、以前書いた。
そのままの目線から、大きな期待を感じさせるチームの仕上がりだった。
さてこれからボンで、どう本番へ持って行くのだろうか。
ジーコ監督の、これまでは見えなかった「W杯の知恵」の側面が発揮されるのは、これからだ。その点が楽しみだ。
攻撃力(FW)が難だとよく言うが、いずれにしても予定した「形」で得点できるチャンスは、こういう場ではそう多くない。巻を入れたのも、そういう見切りからだろう。Jビレッジ合宿でのシュートの「枠に飛んでいく確率」は(低くて)かなり見応えのあるものだったが(!)そう心配することはない。5点も6点も取れとは言っていないのだ。
頑張れ代表。
決勝トーナメント進出の確率は、現状なら49%はありそうだ。相手に何かのスキでもできれば、たちまち5割を超えていく。
ジーコ監督がボンでセットプレーを堂々とやらせたりして、「こそくなことをしない」主義を貫いているのは、好ましい。対して周囲が「セットプレーの図を外国人の目に触れないように」などと心配するのは、信条は分かるにせよ、気の遣いすぎだけでなく、ジーコ監督のサムライ流の心意気をそぐものではないだろうか。
堂々とやって、実力で勝負する。
気持ちの良いことだ。
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、59歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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