- スポーツメニュー
-
- 後藤新弥のDAYS'メニュー
-
新弥のDAYS'
2006年6月19日更新自分に負けるな
<幸運に依存せず、力を出し切ろう>
クロアチア戦直後、中田英寿が火を吐くような口調で「これでは勝てない。勝てる試合を落とした。前半は自分たちのリズムでプレーしたが、後半は(また)相手に合わせてしまった」と言った。
怒っていた。
選手の生々しい、赤裸々なコメントは、内容如何に関わらず「ああ、スポーツだ」という実感がする。
最近は、コメントを選手が「作る」ケースが多い。
そういう心構えでは、試合そのものも「相手を見て」にならざるをえない。
スポーツにはもっと「生(き)一本」の真剣さが必要で、周囲と一緒になって「イメージを作る」のもオフシーズンには必要なことだろうが、いざ戦場に立つときは、自分1人、裸でやって欲しい。中田のように、だ。
スポーツは音楽や芸能ではないから(異質だから)「プロデュース」したりされたりする余裕はない。そういう環境と、戦う自分とは切り分けるべきで、それができないならあくまでも「戦う自分」だけに専念して欲しい。
この試合、後半の日本代表にはチラチラと雑念が見えた。金や名声の「欲」という意味ではむろんないが、チームとしてなすべき事をなす、約束したことをやる、という一本のまとまりが薄れかけていた。
中田がいらついたのは、それだろう。
必ずしもミドルシュートが「積極的な攻撃」とは言えないし、がんがん打つことが「攻めた」ことにはならない。あくまでも自分たちの力を発揮しようと「し尽くした」かどうか。問題はそこだ。その点では、日本が「自分に負けかけた」シーンが少しあった。
結果的には半年前の予想通り、そしておおかたの「サッカー素人」の予感通り、クロアチアはオーストラリアよりは日本からみた相性がよく、見事に引き分けた。
中田は怒っていたが、冷静に考えればこの強豪と分けたのは実に立派で、アウエーの立派な1点だったと思う。
リーグ戦の☆勘定を考えるから「なんだ」と残念がる人もいるだろうが、負けても当然の試合だったのだから、僕は褒める。
結局、スポーツは常に自分との戦いだ。
「自分」はかっこよく戦いたいし、慰めを求めるし、結果が悪ければ内容をみてもらいたがるし、内容が悪くても結果OKなら結果をみてもらいたい。真実の実数値よりも、いくらかでも「ラッキー」を期待する。
でも本当のスポーツの精神は、また本当に強くなろうとするならば、「真実」の値と常に正対する強さが肝心なのだ。
スケート連盟が橋本聖子さんを新しいリーダーに選出した。
こうした役柄は、「選手の気持ちが良く分かる」ことだけでは成り立たない。
むしろ選手とは対立するけれど、全体(社会)のために何をするか、1つ高い見地から物事を見て、実行していく必要がある。必ずしも選手が王様で、協会が選手のためにあるのではなく、最終的には世の中のために、人間のためにあるのだというもう一つの局面をも、橋本さんには大切にしてもらいたい。
橋本さんは、スポーツの根源の精神に自ら触れて戦い続けた人だ。
ある国際大会で、格上のライバルが転倒し、3位の表彰台に上ることになったが、「私はメダルをもらいたくない」とごねたことがあったそうだ。
ライバルと戦い、勝ち取りたかった。けれど相手が転倒したのでは勝ったことにならない。これが橋本さんのスポーツ精神、フェアプレー精神だ。
そういう精神を、サッカーの代表であれ誰であれ、日本プロゴルフ協会のメンバー全員を含めて、スポーツをする者はみな持っている。
けれど、今の世の中は、スポーツに華麗さを求めても、根源の精神を求めることがあまりに少ない。結果だけで見る。感動だけを求めてしまう。勝利の快感を共有することに夢中になりすぎる。パフォーマンスを求めすぎる。だから取り違える選手や役員がいる。
橋本さんには、単にスケート界の立て直しだけでなく、スポーツとは何かを、世の中に再確認させる仕事が待っている。
サッカーは決勝トーナメント進出が困難になってきた。ブラジルが手抜きでもしてくれれば、そういう幸運? はそれはそれでうれしいが、うれしくない(笑い)。でもうれしい(笑い)。
最後まで、自分たちのサッカーをすることをテーマに、戦士には頑張って欲しい。負けても、それは彼らの責任ではない。
日本が決勝トーナメントに進出できる「実力」を持っているかどうか。おおかたの人は知っているはずだ。
でも、可能性はあるのだ。
- Thanks
- ご愛読に感謝申し上げます。すべてにご返信ができないため、整理の都合上、nikkansports.comの本欄、マスター及び筆者個人アドレスでは、コラム内容に関するご感想などのEメールは、現在すべて受付を中止しております。お詫び申し上げます。下記にご郵送ください。
また、他ページ、フォーラムなどへの転載は、引用を含めて、お断りします。ご協力に感謝いたします。
【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥
- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
【 詳細プロフィルへ >> 】