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新弥のDAYS'

2006年7月8日更新

オシムで大丈夫か

<奇跡を求めた「丸投げ」をやめよう>

 千葉のイビチャ・オシム監督(65)に次の世代の日本代表を任せて大丈夫なのか。

 代表で一番心配されているのが世代交代だが、若手を発掘する「目」を持っていることは間違いないし、スターではない選手を育て上げる力を立証している。

 その点で、大きな期待が掛かる。

 これまで、特にジーコ(敬称略)の場合は既成のスター、もしくは「スターといわれている」「スターにプロデュースされた」選手の起用に、あまりためらいがなかった。海外組になればそれだけで特権を得るような印象があった。あくまでも「印象」だが。

 そのベテラン達が年齢限界に達し始める次回は、相当に大胆な若返りも必要かもしれないが、オシム(敬称略)ならこれをプラスに変えることができる、少なくともそのような印象がある。

 全体からみて、これは活性化につながり、川淵キャプテンが最も望むところだろう。

 しかし、だからすべてオシムで大丈夫とは、言い切れない。

 いわゆる「オシム主義」が紹介されているが、「日本は決勝トーナメントに進出できるほどの力量はまだないことを、国民とともに認識しよう」という論点は、ジーコのそれと極端に相反するものではないと思う。

 ジーコだって、「W杯に連れて行く」ことは公約としたが、まさか本音で決勝トーナメントにまで行けるとは考えていなかったろうし、そういう契約の話も聞いていない。

 つまり、オシムのこの辺の考え方、見方、条件の付け方は「常識的」で、あまりにもふつうだ。

 ある意味で、そのふつうさ、現実とかけ離れない「視点」こそ、今、次の4年間に向かうときに一番必要なことでもある。日本の一部が「W杯バブル」的な浮かれた騒ぎ方をしたのは間違いないからだ。

 ただ、「肉離れは油断の結果」とか「お金をつぎ込めば、いいスポーツができるというものではない」といったあたりは、スポーツを自分でやっている者なら誰でも知っていることで、本欄でも書いてきた。古めの日本人にとっては(笑い)常識的でふつうの話なのだ。

 選手ではなく監督の指図でサッカーをするのではなく、選手が自主的にやるものだ、といった自由主義も、底辺ではジーコとなんら変わりがない。

 確かにジーコは選手をある意味で尊重しすぎたが、オシムは代表経験者だろうが誰だろうが、やることはやらせるし、その「やらせる」厳しさを自分の特徴として周囲にも強くアピールするだろう。「内面は温かい親分肌の監督だが、練習でも試合でも、サッカーでは厳しい」といった、日本人に分かりやすいパターンに自分を当てはめて、心のコミュニケーションをスムーズにしようとするはずだ。

 ジーコは監督歴がないだけにその辺りはあまりにも率直で素直、よくも悪くも無防備だった。ただし、同じサッカーだ。ジーコとオシムが本質で別のことを考えているわけでない。オシムが奇蹟を起こせるわけではない。

 ジーコ批判やキャプテン批判に「結果だけをもって」なだれ込むのは、どんなものだろう。ジーコはだめ、オシムはいいと、地獄と天国のような区分けをするのも、オシムの言う「現実を見極めろ」に、早くも反しているような気がしてならない。

 逆にいえば、「オシムだから全部やってくれる、オシムに任せよう」といった姿勢を、日本のサッカー界にはとってほしくないということだ。「オシムなら決勝トーナメントにきっと持って行く」という一方的な期待感もまた、オシムに気の毒な感じがする。

 ジーコは監督として神様ではなかった。

 オシムもまた、1人の人間である。

 その現実をわきまえることこそ、「オシムに習う」第一歩ではないだろうか。

 ふつうにやることは、実は一番難しい。オシムは「ふつう」派だと思う。一番難しいことを、逃げずにやる、やらせる派だ。それを理解した上で、代表監督を(やるなら)やってもらおうではないか。ここでの最大の問題は、オシムが何をするかではなく、オシムの言うことを我々マスコミを含めた「サッカー界」が理解し、オシムが言うとおりに(奇跡を望まずに)実数値の実力を上げていくように対応できるかどうか、ではないだろうか。

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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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