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新弥のDAYS'
2006年9月04日更新オシムうるさい!?
<うるさいと怒鳴り返すヤツが欲しい>
サウジアラビア戦の裏で、NHK・BSが「W杯決勝VTR」をオンエアしていた。
チャンネルを頻繁に切り替えて両方を見ていると、日本代表の「今」の位置が明確に見えてくる。
ジダンはいない。アンリもいない。
オシム監督がそれはいけない、これもいけないと、コーチを通じて指示を出す。その「オシムの指令」を細かにマイクが拾う。
うるさい!
あくまで「個人」としての、スポーツファンとしての勝手な話だが、思わず「オシムうるさい、少し黙っとらんかい。選手が浮き足立つだけだ」と画面に向かって怒鳴ってしまった。
ドメネクもリッピもフェリペも、世界の代表監督はだいたいが口うるさいし、タッチラインに出てきてさまざまな演技を繰り広げる。でも、彼らのチームの選手は「はい、分かりました」と素直に従う時と、「ばかやろう、勝手に怒鳴ってろ」と無視するべき時を心得ている。聞こえても聞こえないふりをするべき時を心得ている。
この若くて一途な日本代表に、そんな芸ができるのはほんの1人か2人だけだろう。
オシム、うるさい。
うるさいのが仕事だ。
オシム監督も初めから勝てるとは思ってなかったろうし、まあアウエーでの結果はこんなものだと思っていたに違いない。僕だってそう思っていた。
勝ちたいならベテランを投入すればいいだけのことで、ドイツW杯組なら2-1か2-0で、あまり苦労しないで勝っただろう。中田がいなくても勝てただろう。
この代表は開始から何をどうしていいか、分かっていたのに分からなくなり、いわゆる「あがった」状態になってしまったように見えた。
序盤に先制されたら、かえって落ち着く(時間と平面の)スペースができたかもしれないが、だからといってさすが優秀な若手集団だからおいそれとは得点までは許さない。
その意味では今後の「慣れ」が楽しみだが、いかんせんチームとしても急造で、浮き足立つとそれを静めることは(この若さでは)自力では難しい。
オシム監督にはそれなりの考えがあったに違いない。勝ちに行くのか、育て上げるのか。彼はこれでもかとプレッシャーを掛け、怒りまくり、教えたことをなぜやらないのだと選手を責めた。選手は地獄を経験した。
リズムを出すのにかなりの時間が掛かったし、それ以降もつまらないミスが多くて得点に至らなかった。勝つチームの心理ではなかった。言われてきたことを実行できるような心理にはなかった。でも、W杯予選やW杯のような厳しい場では、誰だってそうなる。それを「今」経験させたともいえる。
惜しむらくは「うるさい、オシム」と怒鳴り返す選手が欲しかった。
オシム監督としても、そこまで選手を追い詰めたいのではないだろうか。反抗してくる選手が出るほど、徹底して命令し、指示し、いじめ、甘い環境から抜け出させたい。代表は「金の成る木」ではなく代表になるととんでもないしごきを受ける。そいう状況を周知徹底させて、選手の動物的な本能を引き出したい。そういう部分が彼の奥底にあるに違いない。
この試合では反抗する者はいなかった。次はもっと怒鳴るだろう(笑い)。いじめ方が足りないと思っているだろう。
でも収穫も感じているはずだ。「選手はそれなりに自分の持ち味(クオリティ)を出した、そうでない持ち味も出した」と話した(テレビ中継から)。そうでない持ち味。自分で「おれはこういう選手だ」と考えている以外の領域の持ち味を--オシムだけが見抜いた持ち味を少しは引き出した。監督はそう話した。
選手の才能を引き出す名手なのだろう。
我々がメンバーリストから考える領域の外側を、彼は見ている。千葉で発揮したオシムマジックは、おそらくその辺りに秘密があるに違いない。監督インタビューで、最後は選手をかばう発言もした。FWが悪いわけではない、選手が悪いわけではないない。なんといってもまだ若い選手の若いチームなのだ、と。
問題はそのオシム流の4年計画をファンやマスコミ、協会が理解して応援し続けることが出来るかどうかだ。むろん筆者も、オシム流を100%支持するにはまだ至っていない。「?」も多い。うさんくささもある(笑い)。
残念だが、「教育型」で正直な代表指導者は、日本のような環境にあまりそぐわない。初めからそこに対立と矛盾が存在する。オシムが勝つか、日本流のイメージ・プロデュース環境が生き残るか。勝負の行方はまだ分からない。
オシムはサッカーの冒険者だ。老いぼれた冒険者だ。♪ワタシの心はまだ赤い♪冒険者だ。
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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