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新弥のDAYS'
2007年01月25日更新ダイエットのうそ
<メディアは「世間」の反映でもある?>
テレビ番組が「何々を食べればやせられる」といった情報を流す。
基本的に、食べるから太るのであり、やせたければ食べる量や質、タイミングを考えることと、一日の消費カロリーを上げることしかない。
そんなことは中学校で習っていることだが、そういう思考と意志に基づいた行動をせずに「楽してやせられる」方法があると言われれば、わらをもつかみたくなるのもまた、人間の心理である。
そこにつけ込むのもまたメディアの性質だろうが、いかにその誘惑を抑え、基本の枠からはみ出さないで伝えきるかは、メディアの側の義務でもあり、また品性や良識というものだ。
(少し極端な言い方で、語弊があるかも知れないのだが)にもかかわらず、そうした基準を大きく超えてしまう番組が出てくるのは、メディアの側の猛省は当然の前提としても、もっと大きな視点で考えると、「世の中が、正確さを欠いてもいいから、自分が取っつきやすい曖昧な情報を提供する番組も求めている」の反映でもある。
それはそうだ。
テレビで言うなら、すべての番組が「正しいことだけを、正しい枠の中で」という四角四面だったら、面白くもおかしくもない。学会の論文を読み上げるようなことになる。
(四角四面で、余計なことを差し挟まなくとも、たとえば大相撲中継のように観る側を飽きさせず、スター力士が居なくとも「相撲を面白く見せる」努力を続けている番組もある。一方で、せっかくの国際競技になくもがなのテロップを差し挟んで、スポーツを「筋書きのあるドラマ」にするような中継番組もある。だから一概には言えないのだが)
インターネットを含む多様化したメディアに囲まれる現代では特に、このメディアは、この番組は、この記事は「どのような性格なのか」(品性なのか)を、受け取る側はまずもって見極める必要に迫られている。
昔もデマやうそは多かったが、マスコミの情報を受け止める側に「半信半疑」という基本姿勢があった。その情報に自分のすべてをかけてしまうような例は少なかった。少なくとも大人たちは互いにそうした愚を戒め合った。
その「互いに戒め合う」精神風土は、とても大切ではないかと思う。
少し話は違うが、そういえば数年前、こんなことがあった。
「おたくはスポーツ新聞だろう、エッチな記事を載せているような不謹慎なマスコミには取材して欲しくない。うちはちゃんとした所だから、ちゃんとしたマスコミ以外、困るんだ」と、ある人に言われた。
そうですか、特に支障はありませんのでと、引き下がらせて頂いた。
支障がないはずはないが、それは手間暇を4倍かければいいだけの話だ。どうということはない。仕事とはそういうものだ。
今改めて考えると、その人はその人なりの、自分が生きた時代に基づく「基準」を持っていたわけだ。今でこそ日刊スポーツは大衆娯楽紙として多大なご信頼を獲得したが、30年前、40年前は「ふん」とあしらわれることも少なくなかった。ある時代、スポーツ新聞はそのような位置づけで、そのように扱われたのは事実なのである。
困ったのは、こちらはこちらで、その人が「ああ、失敗した。失礼なことをした」と後で感じ、我がメディアを、あるいはその「基準」を見直してもらえるだけのことを結果として提示しなければならなくなったことだ。ただ黙って引き下がっただけでは、立場がない。
拒否されたときに食い下がって、こちらの誠意を理解してもらうという選択肢もあったが(若いときはそういうこともした)この場合は前者を選択した。
そうした緊張感の中での仕事は、本来ルーチンワークですむはずだった日常の仕事に突然ウエートを与え、量と質との吟味を恐ろしく要求する。うれしくはなかった。ただ、結果としてはこうしたことの積み重ねで、ありがたいことにメディアは磨かれるのである。
だから、いいことを言ってもらった、「我々はまだまだなのだ」という貴重な激励を頂いたことになったと、今は大変に感謝している。
ルーチンワークという仕事はない、という仕事の原点も、今一度、思い出させられた。
ちなみに私自身、俗に言うエッチな記事を編集制作する部門に直接属しており、どのようなエッチな記事が(そういった分野の記事を愛読される方々に)より愛されるかを吟味工夫することにも関わっている。「エッチな情報」をさげすむ気持ちは全くない。
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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