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新弥のDAYS'
2007年02月8日更新自転車はどこを走る?
<サイクリストに求められる正義感>
仲間から聞いた話だが、今サイクリストの間で話題になっているのが、昨年11月に警察庁が出した「自転車の安全利用の促進に関する提言」の内容だ。近々、これが道路交通法改正案に持ち込まれて、そのまま新しい規則として決まってしまう可能性もあるという。
詳しいことはよく知らないのだが、サイクリストが神経質になっているのは、この案では自転車の歩道走行が容認され、逆に「自転車が車道を通行することが特に危険と認められた場合は、当該道路の自転車通行を禁止するなどの措置を講じる」部分も織り込まれている点らしい。
現在の規則では、自転車は「車両」だから、特に認められた場合以外は基本的に車道を走るべきだとされているはずだ。
だからと言って歩道を走ったら逮捕されるわけではないが、現実には矛盾が多い。
買い物自転車でタクシーやトラックと同じ車道を走るのは、客観的にも危険だし、事実買い物自転車が車道を走ると、車が迷惑そうなそぶりをする。警笛を鳴らしたり、わざと追尾したりして、歩道に追い上げようとするバスもいる。
もっと現実に即したルールを、という観点からの案かもしれない。
しかし歩道自体も、自転車と人がそれぞれ勝手に使えるほど広くはない。自転車が「ここを走れと言われたのだ」とばかりにぶんぶんと歩道を飛ばせば、危険が増すだけでなくストレスが増え、歩道が不愉快な空間になる。
一方で幹線道路などが「自転車通行禁止」となれば、確かに車対自転車の事故へ減る。数の上では減るから社会の前進にはなろう。けれどサイクリストの側から見ればこれは差別だ。
記憶では、70年代後半に一時期、そんな措置が東京であったような気がするが、周囲では誰も知らないという。勘違いだったかも知れないが、当時、ものすごく腹が立った。いっそう走り方が悪くなった。
ただ、もっと広い観点からすると「自転車をどこに押し込めば事故が減るか」という観点からこの案が作られている気がしてならない。言いたいのはこの点だ。自転車は「押し込められる」物ではなく、交通手段としてもっと重要で、大切に扱われるべきではないだろうか。自転車は、日本人の大切な足であり、将来はもっと活用されるべき存在ではないのだろうか。人、自転車、車という3要素、及び車いすなどの「保護されるべき交通」が、明確に交通の柱として認識され、その認識の上で「何がどこを走る、どこを何と何が分かち合う」といった論議がなされてほしい。
自転車が「邪魔者」扱いされているような印象を受けるのは、筆者だけのひがみだろうか。
ただ、自転車の側にも「正義感」は必要だ。チリンチリンとベルを鳴らして歩行者をどける暇があれば、なぜ「すみません」と口でお願いしないのか。自転車が車より偉いわけではない。互いに車道を分かち合って使うのだ。車が待ってくれたら、軽く会釈の1つもなぜしない。へへん、勝ったぜ! のほくそ笑みだけでは、あまりに卑屈ではないか。
そういう「常識」の基盤、スポーツ的にいえば「正義感」の基盤を無視していたら、どんなルールが出来ようとも、法律が改悪ではなく改善されようとも、現実のサイクリストは自分たち自身が「ハッピーではない」瞬間をより多く生きることになる。
自転車を愉しむのに、口(くち)は要らない。(極言すれば)本来はルールを与えられる必要もない。通行区分を与えられる必要もない。自転車は自由そのもので、それが最大の魅力なのだ。特徴なのだ。
その自由を獲得し、確保するためには、むろん無償というわけにはいかない。当然のことだ。常識や正義感が必要なのだ。
他のスポーツでも、実によく似た話が持ち上がっている。論争が起きて、内輪もめも起きている。海でも、多い。
ただ、強い者が弱い者を保護し、弱い者は「護られた、ありがとう」という意識を持つ原則さえ皆が持てば、世の中はもっと幸せになる。もっとも別の視点からいえば、自転車の問題は、常に「強い者と弱い者の間」に挟まれていることなのだろう。確かに、これは難しい立場ではある。
難しいが、自由を失いたくはない。時速20キロ以下で、などと決められたくはない。また、どうなろうとも「自由に走る」決意は固い(笑い)。真夜中にろうそくを立てて固定台でめい想しながら脚力を強化して、追われたら逃げ切るだけのパワーを身につけるだけだ、などとも、心の中では考える。実際には規則は守るが、偉そうなことを言っても、自分自身もとんだ正義感の持ち主ではある。
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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