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新弥のDAYS'

2007年02月16日更新

サプリの使い方

<強力な助っ人に頼りすぎる危険は?>

 アミノ酸飲料などを中心とした「サプリメント」が、近年のスポーツ界に及ぼした影響は計り知れない。

 筋肉疲労の軽減や疲労回復の補助として、多くの人がその効果を認め、レベルに応じてさらに高度な? 領域のサプリメントを試合に、練習に使っている。

 従来ならとっくに引退していなければならなに年齢層の選手が、今では依然として優勝争いに加われるようなレベルで活躍を続けているが、それらの現場でも「サプリのおかげ」といった声が聞かれる。

 けれど同時に、非常に優れた選手がいっときは日本のトップ、世界のトップに位置しながらも、その後さまざまな原因から「最高レベル」からはやや遠ざかり、選手生命としては非情に長い活躍をしているものの、真の意味で「その人らしい」活躍をすることが難しくなっているーーといった現象も、まま見受ける。

 スポーツの現場では「サプリの摂りすぎに害はないのか」といった懸念が、声にならない声として次第に大きくなりつつある。

 害は、ない。薬ではないから、そのものには害はない。

 しかし、「効果がある」ゆえに、その効果に頼りすぎてしまうことは十分考えられることだ。たとえば能力の高い選手がサプリを日常的に練習でもどんどん使うとすると、疲労回復は速まるし、練習中に疲労感が出てくるのが遅くなる。だからこそ、その効果に依存しすぎるような可能性は当然ある。

 だからといって、その人の自然な「疲労回復能力」が低下するとは考えにくいが、人間がスポーツであれ、仕事であれ、何かを行う(work)ことがあれば、そこで使用した筋肉や即時的な体力だけでなく、奥深い部分の疲労や、思考、集中力に関連する部分(本能)にも、疲れは出る。目には見えないが、その短い時間のサイクルでは感じないが、やっぱり疲れは残る。

 本来はそうした奥の部分をも含めて、人間には「疲労回復の時間」が必要であり、それを短縮することはできないのではないだろうか。

 サプリによるアシストをあまり多用すると、短いサイクルでは大助かりでも、長いサイクルでの「深い部分の疲労」が逆にたまり、あるいはそれを軽視したり、無感覚になりやすいーーそんな危険や、兆候を、現場ではまま感じるこのごろである。

 むしろピークのパフォーマンスを出すべきではない練習時に、サプリの助けでついピークを出してしまえば、奥底の疲労は知らず知らずにたまっていく。昔だったら「試合で力を出し切るんだ」と、自分の体調や心理(モチベーション)を実に慎重に組み立てるが、今はサプリのおかげで、かなり無理が利くようになったとすれば、「そのツケも積極的に払う」(十分すぎるほどの休養の「時間」を自分に与える」ことが、求められるのではないだろうか。

 以上は学者が言い出したことではない。筆者が自分の体験から「そんな気がする」程度の感覚を、書き出してみたものだ。だから科学的でもなければ根拠となるデータがあるわけでもない。

 けれど、だれもそうした「サプリ摂取についての心得」を発言しない。あまりにみなが黙っているので、「そういう角度からも一応はものを考えておく必要はある」と、ボクは考える。

 いいにくい話だが、マスコミ自身が何かの商品に「疑問を投げ掛ける」ことは難しい時代になっている。だから「やばいから触れない方がよい」と考える人も少なくない。

 けれどもしメーカーが本当に「良い物を出している」という自信があれば、摂取の仕方について「もっとよく知ろう、よく考えよう」という姿勢の取り組みに、嫌な顔をするはずがない。

 山と渓谷社の「山と渓谷」2月号の付録に、毎年恒例の「山の便利帳」がついていた。山を知る人ほど、この手帳を大事に扱う。

 その巻末に「アミノ酸の そこが知りたい」という7ページの記事が出ていた。  日焼けに効果がありますか。毎日飲んだ方がいいですか。アミノ酸を飲むと筋肉がつきますか。ダイエット効果はありますか。

 ありがちな疑問、というよりもそうした効果が「ある」と信じている人もすくなくない疑問点だが、やんわりと、あるいははっきりと「基本的にはアミノ酸を飲むだけではその効果はない」と、明示している。すごい。

 一方で「登山の場合は登り始めて2時間後ぐらいに摂取するといいでしょう」「筋肉疲労だけでなく、神経疲労の防止にも効果があると考えられる」といったプラス面もはっきりと明示されている。

 三愛病院外科部長篠塚規さんの監修によるものだが(文=元井昭博さん)、「なるほどそうか」「ではアミノ酸サプリはこう使おう」だけでなく「ああ、安心した」「こういう記事を見てほっとした」という印象が強い。

 ボク自身はだらだら(笑い)使う? より、粉末などで「必要なときにしっかりと」積極摂取するパターンが好きだ。味がよいからというだけで日常的に飲むこともあるが、日常の練習やトレーニングでは「事後の疲労回復」を中心に考え、練習中のパフォーマンスを上げるためには(事前の摂取=効果ありと感じているが)使わないことにしている。それと、長期的な視点からの「疲労回復「疲労除去」に留意するよう、心掛けている。調子が良いからとガンガンやると、オーバーワークになって肉離れなどの不注意事故を起こしやすい年齢だからだ。

 サプリの使い方について、もっとみんながオープンで話し合い、体験をフィードバックするような習慣が、求められる時代になったと感じている。テーマはサプリそのものではない。その「使い方」である。

 諸兄、いかがなものだろう。



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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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