このページの先頭



ここから共通メニュー

共通メニュー


ホーム > スポーツ > 新弥のDAYS'



新弥のDAYS'

2007年03月05日更新

小学生に講演した

 <核心をずばりと受け止めてくれた>

 メディアの仕事について、小学校6年生の将来の参考になるような話をしてもらえないかと、地元三鷹市(東京都)の第6小学校から依頼を受けた。

 人前で話すのは苦手だが、家のすぐ前の学校だから、断りにくい。相手が子供というのも、訥(とつ)弁おやじには難題だったが、娘も息子もかつてお世話になった所だ。

 及び腰で引き受けた。

 スポーツ記者(スポーツライター)になりたい、スポーツジャーナリスト(フリーライター?)になりたいといった希望はけっこう多いようだ。でも、見かけと現実は違うし、社会における機能も違う。出来る限り「本当のこと」を本音で伝えておくのは、立場上、大切でもある。自分の仕事を見直してみるきっかけにもなる。

 ●「取材で飛び回る」「ばりばり仕事をする」「特ダネをすっぱぬく」といった慣用句に、絶対に惑わされないこと。

 ●実際には「ただひたすらに待つ時間」の方が「派手に飛び回る」時間より長い。

 ●活躍などする必要はない、地道に仕事をしっかりとこなすことが肝要で、活躍志向の若手が記者として大成した例はない。

 ●選手だって自分のことが分かっていないことが多いので、「こう話した」ことは事実でも真実とは違うこともある。

 ●伝えねばならないニュースと、求められるニュースはしばしば異なる。求めに応じたニュースも大事だが、喜ばれないニュース、面白くないニュースをきちんとこまめに出すこともジャーナリストの責任だ。

 ●「ウケ」だけを仕事の価値基準にしてしまわないように自制しないと無意識に“あるある”になる。

 ●新聞はさまざまな仕事の分担で成り立っている。それぞれが自分の役割を見極め、真剣に取り組んで、面白がって仕事をしている。1人の記者が頑張っているわけではない。

 ありきたりだが、そういう話をした。

 「最近の子どもは」といった論調の話をよく聞くが、事後に「こんな感想でした」と、先生が丁寧にレポートを届けてくれた。

 最近の子どもは、すばらしい。

 それが感想である。

 いただいた「おじさんの講演の感想」には、こんなものが含まれていた。

 ★どんな目立たない仕事でも裏方はないという言葉を聞いて感動しました。

 ★心に残ったことは「真実を伝えたくても伝えにくいニュースもあるということです。またインタビューを受ける側にも言いにくいこと、言いやすいことがあるということも分かりました」

 ★スポーツライターの仕事は、スポーツが好きだからできるものではないと思ったので、僕は仕事選びは慎重にしようと思いました。

 ★かっこいい仕事だなあと思っていましたが、どんな仕事であろうと、つらいことはたくさんあるんだなあと思いました。

 ★話を聞きたい人の所で、何時間も待ったりしているからいろいろ記事が書けるのだなと思いました。

 みずみずしい感性でもあり、また物事の核心を短時間でずばりととらえる優れた能力は、とても小学生とは思えないが、これまた「町の事実」であり、「子供だから話のレベルを落とす」必要などまったくないことが確認できた。

 実際に一番伝えたかったのは、どんな職業に就くかも大切だが、もっと大事なのはどんな仕事でも真剣にやれば面白くなる、だから「面白くなった者が勝ち」なのだ。そもそも「裏方の仕事」なんてものはない、という点だった。彼らはそれも理解してくれた。

 卒業を来年に控えた大学生たちに、同様の話をしたことがある。「でも僕は新聞記者のイメージが好きなんです。なりたいんです。どういう勉強をしたら試験に合格するでしょうか」。話した後で、最初に受けた質問がこれだった。「君は絶対に合格しないから安心したまえ」と言うと、半数が笑い、半数がけげんな顔をしていた。

 むろん、実際にはそういう人にも平等のチャンスがあるわけだ。なぜなら、僕は試験係ではない(笑い)。



Thanks
 ご愛読に感謝申し上げます。すべてにご返信ができないため、整理の都合上、nikkansports.comの本欄、マスター及び筆者個人アドレスでは、コラム内容に関するご感想などのEメールは、現在すべて受付を中止しております。お詫び申し上げます。下記にご郵送ください。
 また、他ページ、フォーラムなどへの転載は、引用を含めて、お断りします。ご協力に感謝いたします。
 【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥
プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
【 詳細プロフィルへ >> 】


このページの先頭へ