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新弥のDAYS'

2007年05月22日更新

新感覚のビーチマラニック

<葉山の海岸から里山へ10kmを主催>

 20日の日曜日、いつも一緒にNPOの仕事をしている遠藤大哉さんらと、神奈川県の葉山で「ビーチマラニック」開催を手伝った。

 スポーツは常に「やる」側が好きで、現場記者時代も、大所高所、外側から協会関係者や監督さんから話を聞いて書くのが、実に苦痛だった。

 特に、大会などで「現場」と呼ばれる記者席やプレスルームに押し込められて取材させられることに、内心では強い反発を感じていた。

 選手の息吹や汗が好きだった。特に、洗いさらした、汚いようなシャツを着て練習する、日常の姿が大好きだった。仏頂面して、それでもいざとなると真剣に練習する横顔が、大好きだった。

 でも、そればかりがスポーツではない。

 最近はNPOバディ冒険団とともに海のイベントを手伝うことも多くなり、いわゆる「主催者」側に回ってスポーツと関わっている。年をとったのだ(笑い)。

 マラニックという新しい分野がある。

 マラソンとピクニックの合成語だが、必ずしもタイムを意識せず、もっと新しい風景や感覚を探しながら走ってみようと言う試みだ。

 これを、昨年来やっている「ビーチラン」に持ち込んでみた。ビーチランは砂浜を3~6キロ走るイベントで、脚力やバネを要求するため、アスファルトやトラックの上とはまた異なったトレーニングにもなるので、湘南では好評だ。

 今回は、葉山御用邸前から北へ往復2キロ砂浜を走り、その後道路を越えて急坂を上り、秋谷配水池の横を抜けて湘南国際村の下まで往復する6キロの「トレールラン」を組み合わせた、10キロコースの「ビーチマラニック」を設定してみた。

 特に宣伝はしなかったが20人が集まった。アスリートたちはやはり「全力を出し切りたい」という本能が強く、「全力を出す楽しさ」が「ゆっくり走る」楽しさを上回ると告白した。

 主催者としては、頭で考えたプランにこだわらず、その本能は本能として尊重することとし、「タイムを狙うグループ」と、「だいたいまとまってゆっくり走ってみたいグループ」に2分して、午前10時にスタートした。

 こちらも初めてで、「コースミスした人がいるようです」「あ、見つけました、元のコースに戻りました」「信号待ちでつっかえてまーす」など、コース上に散ったスタッフからの無線連絡に、ひやひやしたり、ほっとしたり。

 「走りきれるかしら」と言いながら、前の集団を追い掛けていく女性ランナーや、中性脂肪のおもりを腹に抱えながら、それでも意外なペースで中間点を抜けていく男性ランナーと、さまざまだったが、やはりトップは速かった。

 59分での1位ゴールは、昨年のライフセービング全豪選手権のビーチラン(2キロ)準優勝の本田吉紀(24=ほんだ・よしき)さん、セントラル・フィットネスクラブ湘南台のインストラクターだった。

 高校時代はバスケットボール、「父が江ノ島で船を持っていたので、小さい頃から海が好きだった。ライフセーバーに憧れていた」そうで、東海大入学時からライフセービングの活動を開始、現在は茅ヶ崎サーフ・ライフセービング・クラブに所属している。

 この競技のビーチランでは02~04、06年と全日本選手権を連覇。06年世界選手権でも4位に入った強豪だ。

 日常的にはトラックやロードで10~15キロの練習を続けているという。

 その「走りのプロ」でも「今日は新鮮だった」と、息を弾ませながら、ゴール後話してくれた。

 「走り慣れたコースではない場所を、しかも砂浜から山道へと変化するので、実に挑戦的な感覚があった。上り坂のトレーニングはいつもしているのに、タイムを意識して真剣に競走すると本能がとぎすまされて、集中力が驚くほど増した。真剣に数メートル先まで見ていないとバランスをくずすので、神経も筋肉も全開状態で走った。毛虫が葉っぱに付いているのが見えて、さっとよけたことに自分で驚いた。いつもなら間に合わずに踏みつぶしていたと思う。なんだ10キロかと思えばそれまでだけれど、こんな新鮮な気分は初めて。クロス・トレーニングにも最高の場だと思った」

 豪州にも留学し、現地でライフガードなども体験してきた。アウトドアのことならすべて体験済みのはずだが、それでも何か新しい感じがしたと、話してくれた。

 「でも、もっとゆっくりと、愉しみ派に入って走ってみたい気もした」。

 是非、たまには。

 主催する側にはけっこう苦労もあるが、そういう話を聞くと「あ、やってよかった」という印象が強い。

 最後のランナーが2人、2時間弱で帰ってきた。笑いながら帰ってきた。

 ははは、やっとゴールだ、と言いながら、まだ余裕がありそうだった。

 一方でコースミスが続出した。主催側の案内不足によるものだ。

 「よし、次はしっかりやろう」スタッフが反省した。「いや、地図をコピーして配って、ミスコースは参加者の責任にしてしまおう」と、私。皆が笑った。後で怒られた。責任感に欠けている、と。

 でも、本田さんにその話をすると「それも面白いと思う。地図を読みながら走るのも、アウトドア競技ならでは」。

 ふむ、やってみるか(笑い)

 余談だが、本田さんに砂浜を走るコツを聞いた。「僕は特に足の指が開きやすいので、大きく開いて、砂を積極的に捕まえて走っている」そうだ。普通、砂でロスしまいと砂から逃げて「軽く着地して」走ろうとするが、これだと逆に足を取られやすい。

 逆に「しっかりと砂を捉える」ことで、ストライドも延びるそうだ。その分、接地回数が減るので、一層速くなるという。

 参考になりそうだ。

 http://www.sports-buddy.jp/



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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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