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新弥のDAYS'

2007年06月09日更新

遼はコメントが面白い

<ゴルフの生の面白さが伝わってくる>

「コメントがすばらしい」石川遼(撮影・たえ見朱実)
「コメントがすばらしい」石川遼(撮影・たえ見朱実)

 ゴルフの新星・石川遼が最年少でツアー優勝を記録した日、あるベテラン・ジャーナリストに「何がいいの、彼は」と(技術的な質問のつもりで)聞いたら、いきなり「コメントがいいですね」という返事だった。

 ほう、プロの見る目はそんなものかと思ってその後も気になっていたが、間違いない。

 これまでの日本のスポーツ選手は、どちらかというとテレビカメラや記者団に囲まれると「自分からうまくまとめて切り上げる」傾向が強かった。

 サッカーの旧日本代表などでも、(今負けたばかりの)試合の内容について聞かれているのに「気を取り直して、自分たちを信じて頑張ります」といった、「気持ちコメント」が多かった。事前に考えたコメントも多かった。

 もちろんファンの側はそれでも話が聞けて満足だが、海外の選手は「自分の感情」だけにこだわることなく、「今何が起きたのか」を、カメラやマイクを通じて「社会」に伝えようとする姿勢が根元にある。競技やTPOで一概には言えないとしても、「今日はこういうことをやろうとして、こう成功した、失敗した」という、具体的な話が多い。それに対して「明日はまた頑張ります」と、のっけから手際よくまとめようとしがちな日本の選手に、むろん何の咎(とが)もなければ非難すべき事でもないのだが、物足りなさを感じることがあった。

 メディアとの関係、社会との関係の意識をプロ意識と呼ぶなら、「真のプロ意識が足りない」と極言する評論家の言葉も、部分は当たっているかもしれない。

 米国のプロ選手は「これはサービス精神といったものではなく、競技者の1人としての心得であり、いかに自分の関わっているスポーツが興味深く、また自分“たち”が真剣に取り組んでいるかをアピールするチャンスなのだ」といった教育を、最初に受ける。

 石川遼の場合、別にウケ狙いで笑いを取ろうというのではない。だからこんな愉快な事を言った、という笑い話集はできないが「あそこでこんなことがあった。こう感じた」と、起きたこと、感じたことを、ストレートに話している。

 たとえばアイアンがぶれ始めると「気を取り直して明日は頑張ります」ではなく「インパクトで身体が起きあがっているのが分かったが、途中で修正するのが怖かった。(怖いという)気持ちの乱れ(自体)も一因です」(日刊スポーツ8日付け記事より)。

 その現場にいなかった者も、そのコメントを聞くだけで、どんな様子だったかが(むろん現実と差異はあるにせよ)生き生きと想像できる。そうした心の動きが、やる者にも観る者にも、聞く者にも「ゴルフって面白い」という共通の感情をさらに呼び起こす。

 どこで、何があって、それがなぜだったのか。「そこが知りたい」に、生で答えている。

 家での教育もしっかりしているのだろう、浮ついたところがない。

 父親が「調子にのるな」と戒めたそうだが、ずっと昔、北の湖が大関になった時(1974年初場所優勝後に昇進)、歓びのコメントを求められた父親が「まだ子どもですから。浮つくんでないと言ってください」と、にべもなく言ってのけたのを思い出す。

 結局のところ、そうした教育や本人の姿勢と「コメント」は、必ずしも無関係ではないのだろう。

 石川遼も、他のすべての若手と同じように、将来は未知数で、強いならその真価は荒天のゴルフや、競り合った苦しさの中で、あらためて発揮されるだろうし、まだ強くないなら、これから磨かれるだろう。

 少し人気先行かもしれないが、彼だけでなく、彼の世代が、これまでとは少し違った力を発揮し始めていることに、注目しておきたい。

 米国でウッズが飛び出してきた時のような印象がある。

 新しい資材の用具になり、飛距離も延びた変化に対して、大人たちは「変化に対応して」きた。今、ようやくジュニアゴルフが「初めからその変化したゴルフ」の中で成長してきた。そういうタイムラグが背景にあるのかもしれない。

 スポーツと集中力の関係が社会にも浸透し、「緊張すまい」「させまい」という時代から、積極的に集中していく風潮が、若い世代には見受けられる。

一連の「王子症候群」はそうした「群れの象徴」として捉えれば「なんと軽薄な」と、腹を立てる必要もなくなってくる。

王子たちの後に今は控えている「群れ」に、スポーツの玄人ファンは熱く、優しい目を向けている。



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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、61歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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