このページの先頭



ここから共通メニュー

共通メニュー


ホーム > スポーツ > 新弥のDAYS'



新弥のDAYS'

2007年10月19日更新

増える「謝らない」人

<社会に対する競技(者)の責任を自覚したい>

 今年の日本のスポーツは、季節とおなじようにどこかおかしい。

 大相撲の不祥事、世界陸上の不振、そしてボクシングの醜い場面。

 もちろん例年同様、すばらしい場面もある。ボクシングの内藤選手の戦いぶりもその1つだ。

 けれど全体を通してみると、日本が勝ったとか負けたではなく、何か根元の「スポーツの柱の精神」にひびが入り、それが瞬く間に拡大して、スポーツそのものが崩壊していくような、寂しい感じを受けることがある。

 世代によって、地域によって、それぞれが受ける印象は異なるだろうが、おそらく戦後世代には「スポーツって、もっとすがすがしいもので、またそうあるべきだと思っていたのだが」という感傷をぬぐい去ることができないだろう。

 それは、何か起きたときの、その組織や競技の責任者の姿勢の「印象」が、ある意味で大きく影響しているのかもしれない。

 不祥事に際し、「これこれの処分をする」といった会見に先立ち、本来なら「一言お詫び申し上げる。今回の事件で、社会の支援と応援を受けて育ってきた我々の競技、あるいはスポーツ界に対して、非常にマイナスの印象を与える結果になったことを<責任ある立場のものとして>社会に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいだ」といった、競技者(もしくは競技関係者)としての本筋の責任と遺憾の意を明らかにするべきではないだろうか。

 むろん、「迷惑をおかけした」などという間接的な意味の謝罪ではなく、直接的に「悪うございました」という謝罪である。

 むろん、事情説明よりもまず謝罪が先である。説明を先にして「だから理解してもらうのが当然である」と考えるのは、社会人成り立ての新人のすることだ。

 「私は処分する側だ、何を誰に謝る必要がある」。そういう論理を振りかざしたくなるのは人情だが、スポーツは社会の中で特別な扱いを受け、育てられてきたものだ。スポーツという概念は、一つの組織や競技、あるいはスポーツ界のものではなく、社会全体、人間全体の共有財産なのである。

 それが分からないというのは、少し情けないと思う。

 そういう責任者が、誰を、と特定するわけではないが最近は多くなった(そうでない立派な人も少なくないが)。

 おそらくはスポーツ、あるいはその競技をピラミッドに見立てた場合、自分がその最高頂点に位置するものだと、考えているのだろう。

 僕は逆だと思う。

 スポーツは社会の理解を得て育ち、行われる者だから、これは逆三角形で考えるべきではなかろうか。つまり、底辺が上に存在し、頂点は一番下に存在する。五輪選手や協会長は一番下の点であり、社会のスポーツをもっとも下からささえるべき人たちなのだ。

 きちんとした謝罪ができない時、社会は怒る。なんだ、おれたちが夢中になって応援してきたこのスポーツは、こんなていどのものだったのか、と。

 むろん、責任者だけではない。

 競技者の中にも、自分や自分たちのやったことの是非が分からず、あるいは分からないふりをしたまま、パフォーマンスを続ける一群もある。それが拡大しつつある。

 どのような競技のスタイルをとろうと自分の勝手だろうと考えるのは、あまりにも利己主義で、幼稚ではないだろうか。

 「一人でおおきくなったような顔をして」と、よく両親に叱られたが、競技に参加する者は、競技の持つ社会的な意味や責任を、じっくりと考えてみたらどうだろう。だれのおかげで競技が成立しているのか。それをテレビ局だの協会だの、主催者だのとしか考えられないなら、実に残念だ。 

 競技者としての精神が価値をなくし(なくされ)、スポーツはただ勝った負けたのドラマになってしまうのが、一番怖い。

 競技者という「厳しく険しい人生」を選択した者たちの栄光や悲哀だからこそ、それを報じ、報じられる価値を持つのであって、ただサクセスした、有名になっただけなら、トレンディドラマを見る方がよほどいいーーという人も増えるに違いない。事実、そうなりかけているのではないだろうか。

 潔く謝罪する、などということは、競技者精神のイロハのイでもある。

 勝負も大切だが、競技者という人生、競技者という精神を、もっと大切にしたい。

 地球温暖化による地球と同じように、競技者精神がむしばまれていく。環境問題を声高に主張する表向きのリーダーたちを好きになれないが、スポーツも同じ運命をたどりつつあるのだとしたら、悲しいことだ。

 立場上、その「崩れゆくスポーツ」と討ち死にするしかない。

 競技者精神の復活。北京五輪へのテーマとしたい。

****************



Thanks
 ご愛読に感謝申し上げます。すべてにご返信ができないため、整理の都合上、nikkansports.comの本欄、マスター及び筆者個人アドレスでは、コラム内容に関するご感想などのEメールは、現在すべて受付を中止しております。お詫び申し上げます。下記にご郵送ください。
 また、他ページ、フォーラムなどへの転載は、引用を含めて、お断りします。ご協力に感謝いたします。
 【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥
プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、61歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
【 詳細プロフィルへ >> 】


このページの先頭へ