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新弥のDAYS'
2008年01月31日更新コート上でも勝て!
<政治力の援護射撃は金メダルだが>
ハンドボールの五輪アジア再予選では、日本は韓国をしのぐことができませんでした。
今回の五輪に向けての予選では、日本協会の国際的な政治力が大きなパワーを発揮して「やり直し、再予選」の権利を勝ち取りましたが、結局のところこれはスポーツであり、強い者が五輪に進むわけです。
日本は大きな努力をしてきましたが、それでもコート上ではまだまだ力不足。さらに言えばコート外での筋トレや体力作りの面でも、韓国には負けていたような気がします。
久々に大きな騒ぎでした。
再予選の話を知った茶の間や若い人の間では応援ムードがにわかに盛り上がりました。
ハンドボールはスピードと運動神経が必要な高度な球技で、一方手軽なことから各国で盛んです。他のスポーツのトレーニング遊技としても高く評価されていて、サッカー選手などがオフに、これでウオームアップすることも少なくありません。そして逆もありです。
ソウルの五輪代表に同郷(岐阜県萩原町)の知り合いがいて、今も指導者として活躍しています。
そのせいか、ついひいき目に見てしまうのですが、それだけに今回の一連の動きに対して、今になって思えばもう少し客観的な見方もするべきだったなあと、若干反省しています。
というのも、初めは「スポーツだから、終わったらそこまで。文句があるなら、それも規則にのっとった方法で正すべきだ」という極めて正論的な発想も、胸にありました。
だから「再予選を要求するのだ」という動きには、賛成で、「そうなったらどんなにうれしいか」という思いと、同時に「それはある意味でスポーツマンシップに反するかもしれない」という懸念もありました。
しかし世の中の反応や、選手たちの気持ちが盛り上がるにつれて「?」部分は消え去って、「当然日本が正しいのだ」という気持ちに完全に支配されましたが、現場や茶の間は当然それでいいとして、ジャーナリストとして当初の疑問に明確な答えをださないままにただ流れに乗って応援し続けたことは、果たしてどうだったのか、反省点がある。
そう感じるわけです。
世界的な「目」でみれば、今回の騒ぎはアジア地域の問題で、しかもずっと前から問題になっていたことが原因でした。すなわち中東の審判は、中東勢の肩を持った笛を吹きすぎる、目に余ることも多いという「審判の問題」です。
今回の北京五輪アジア予選の段階でこの休火山がとうとう爆発し、日本と韓国が「再予選」という強硬手段をアジア連盟を飛び越えて国際連盟に訴え出て、「君たちが正しい」というお墨付きを獲得しました。
こうしたスポーツの国際政治面で日本が勝ったことはあまりなく、泣き寝入りが多かった現状を見ると、この勝訴は大きな金メダルで、携わった役員諸氏の功績は高く評価するべきでしょう。競技が強くなるには、まずこうした「コート外の戦い」国際政治力にも強くなることが必要なのです。
ただ、こうした形ではない解決への道もあったはずだと思います。
柔道は、手間ひまをかけて「国際的な審判の再教育」に乗りだし、日本の柔道を間違ってジャッジすることのないよう、プログラムを組みました。成功しました。
ハンドボールの場合、以前からの問題だったのであれば、アジアの中でもっと以前からこの問題への取り組みを提案し、不公平是正への正面からの取り組みも、理論上はできたはずです。今回は「再予選」を勝ち取りましたが、不公平なジャッジそのものの修正や改善、是正プログラムが始まったわけではありません。このままなら、また同じことが起きることになります。
「それは理屈だ。現実にはとてもそんなやり方は通らない」と、反論を受けそうです。その通りなことはわかっています。が、スポーツファンの中には、頑固な正義派もいるのです。
ある人は「やり方として、アジア内部での問題解決や、根本的な不公平ジャッジ是正への努力をどのぐらいしたのか。それを不十分なまま国際連盟へ<自分が出られないからといって>いきなり提訴したのは、駆け引きとしては評価するが、『先生、誰それ君が』といきなり告げ口に出て、先生のさばきに依存した観がある。強さはさほどではないにせよ、スポーツ大国のひとつ日本たるものとして、今回のやり方が本当の意味で胸をはれるかどうか、再考してほしい。むろん正しいことは間違いないが」と指摘していました。
<<敗けは敗けとしてスポーツらしく受け入れ、これとは別に審判の笛の是正へ(遅ればせながら)(将来のために)立ち上がる>>といった行き方も、選択肢としては確かにあったような気がしてなりません。
そうした見方や考え方も社会の中にはあったわけで、そのあたりの是非論がはじき飛ばされる形で、物を言わせないほどの勢いで一気にハンドボール再予選が盛り上がり、日本代表がにわかなヒーローとなりました。
負けたのでまた忘れ去られていく、といった流れを感じると、自己反省せずにはいられない「戦いの後」今日この頃です。
戦いは続きます。
5月末、世界最終予選が行われ、日本にはまだチャンスがあります。
選手は命を賭けています。
本当の意味で、応援してあげてください。
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、61歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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