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後藤新弥の「スポーツ&アドベンチャー」
2007年05月15日更新明日に向かって飛んだ!!
10メートルプラスの崖から「3、2…」ウオォオォ~、ヒーッ、ドボン!!
穏やかな流れに見えるが、雪解けの利根川は冷たくて油断がならない。高さ10メートルプラスの絶壁から見下ろすと、足がすくんだ。時間がたつほど怖くなる。その追い込まれた最後の数秒間が、後で思えばスリルの頂点だった。群馬県みなかみ町で崖(がけ)から飛び込む「笑冒険」に挑戦した。単純だが、これぞ川遊びの原点だ。行くぞ! 飛んだ。肉体中央部の激痛まで、あと1・5秒のことだった。
腹が据わらず
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| 「明日に向って撃て!」の最新版だ。宮川さん(左)と一緒にウワーオ! 諏訪峡へ飛び出した(亀田正人撮影) | |
6年前、ニュージーランド出身の野外活動家マイク・ハリスさん(33)が、キャニオニング(滝下り)やラフティングといった新しい川遊びの基地「キャニオンズ」を開設した。オーストラリア、米国などでアウトドアガイドの経験を積んだ宮川祐二さん(37)がチーフを務めている。その宮川さんに指南役を依頼した。「肝試しに崖から飛び込んでみたいんです」。かねて温めていた冒険企画だ。
JR上越線の水上駅から1キロほど下った諏訪峡の右岸に断崖(だんがい)絶壁の個所がある。通称「銚子橋のジャンピング・ポイント」。対岸の左岸には、のどかな遊歩道が続いていて、カメラマンがそこでにやにや待っている。おやじ、おびえを悟られまいと手を振ったりしたが、川面をのぞき込む動作がすでにぎこちない。
崖は下流に向かって次第に高くなり、2メートルから12メートルまで、いい具合に岩のジャンプ台が並んでいる。5メートルを試した後で、どうせならと高い方から2番目の10メートルプラスを希望した。決断力不足が露呈した。腹が据わらないのだ。
せいぜいが3階建ての屋上だと思ったが、実際に下を見ると、底の方が薄暗くて何やら気持ちが悪い。緑色の川が底無し沼のようにも見えるし、隠れた岩に激突するのではとも思う。
人間性が出る
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| ウォオォオォ~ | |
宮川さんが励ますように言った。「水量次第ですが、ラフティングツアーでもここでお客さんに飛び込んでもらいます。一般用は高さ5メートルまで、7メートル以上はガイドの訓練用。初めてだとかなり勇気が必要で、普通の人はやりたがらない。それをやるというのだからご立派です。飛び込みは人間性がもろに出るので、横で見ていても面白い」。つまり、あほということか。
周囲には誰もいない。
なおもためらっていると、宮川さんがカウントダウンを始めた。「3、2、」。行くしかない。教えられた通り両手でライフジャケットの肩ひもを握り、頭は垂直。「助走はなし、両足でぽんと1歩前に出る感じで」そのまま飛び出した。
ふわっと浮いた。それからシューッと落ちていく。加速しながら落ちていく。景色が縦に流れた。息が詰まる。取り返しのつかないことをしたらしい。リセットボタンはないのか。
両足閉じず…
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| オオオオ~~オォオオ | |
ドッカーンと水に突っ込んだ。その瞬間、もう1つの注意「男性は両足を閉じて着水すること」を思い出した。間に合わない、足は肩幅に開いたままだ。
直撃がきた。ウワッ。10メートルの落下エネルギーを○○で受ければつぶれるに決まっている。高飛び込みの五輪選手がまた開きでおどけたりしないのは、こういうわけか。でも「女子はどうなるの?」と考える余裕は全くなかった。
ウエットスーツのおかげか、沈み込みは3メートル程度だった。浮上すると、師匠の拍手が聞こえた。手を振って大観衆に応えた。実は下を見るなと言われたのに、飛び出してからちょっと左下の水面を見た。そのせいか右にかしいで着水したらしい。右腰が少し痛い。だが大満足だ。
映画「明日に向って撃て!」を思い出した。壁の穴強盗団の2人が崖っぷちに追い詰められた。P・ニューマンが「飛び込むしかない、行くぞ」と叫ぶとR・レッドフォードが「いやだ」。「何で」「だって、泳げないんだ」。笑わせた。「関係ねえさ、どうせ死ぬんだ」「それもそうだ」と一緒に身を躍らせた。
落ちていったボリビアで最後はハチの巣にされたのだが、生きるか死ぬかの瀬戸際をジョークでやり合うアウトロー魂が、とてつもなく新鮮だった。おれもワルになりたいと思った。
人生ままならない。結局、銀行強盗はおろか、逆に銀行に住宅ローンの利子を払う羽目になったが、飛び込みだけならまねできる。今からでも遅くない。あの2人もあそこを打ったと思うとおかしくて仕方ない。
師匠と一緒に
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| ヒ~ッ、ドボン!! | |
「先生、あれやりましょう」。成功に気をよくして、今度は宮川さんと一緒に飛んでみた。師匠のような空中パフォーマンスはできなかったが笑って飛べた。
もう1本! もう1本!
次はもっとうまく飛べる、もっと楽しめると、本能がせき立てる。恐怖が刺激剤になる。はまってしまった。
よし。この夏は「としまえん」のプールへ行こう、3メートルの飛び込み台で男を上げるのだ。
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| ワイルドバンチ? キャニオンズのスタッフは個性派ぞろい。左からマイク社長、宮川さん、冒険万能のグラッシーさん(33)、バンジージャンプの達人でもあるチャールズさん(33) | |
◇キャニオンズみなかみ ラフティングからキャニオニングまで、川と滝遊びを総合ガイド。各半日(8000円から)1日(1万3000円から)コース。MTB、バーベキューなどのオプションも可。(電話)0278・72・2811 http://www.canyons.jp/
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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