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後藤新弥の「スポーツ&アドベンチャー」

2007年06月26日更新

強烈横G、左へ右へ頭部振られK耐!!

人気のレーシングカートを体験、オヤジすっかり気分は英雄!!

 8月4、5日、この夏も栃木・ツインリンクもてぎで7時間の「もてぎKART耐久フェスティバル」が行われる。略してK-TAI(K耐)。鈴鹿8耐の向こうを張るカートのイベントだ。今年から発電機用エンジンを使う「4ストスポーツカート」クラスが新設された。誰でも参加できる、セナになれる、亜久里になれると試乗に誘われた。地をはうようなスタイルでアクセルを踏みつけた。おやじ、サーキットの猪(イノシシ)と化した。



インへ突っ込む

強烈な横Gに耐えて最終コーナーに飛び込んでいく。おれはセナかマックイーンか。すっかりその気になった(亀田正人撮影)
強烈な横Gに耐えて最終コーナーに飛び込んでいく。おれはセナかマックイーンか。すっかりその気になった(亀田正人撮影)

 4ストローク特有のずぶとい排気音が腹に響く。手慣れたふうをみせて2、3回アクセルをあおる。スタッフがサインを出した。スタートだ。セナでもシグナルが変わる瞬間は心拍数が160を超えたそうだ。どきっどきっという心臓の鼓動がヘルメットの中で大きくなる。映画「栄光のルマン」を思い出す。

 ギアはないから加速はアクセルを踏みつけるだけだ。ピットロードを抜けて、左手の北コースへ合流する。規則通り左手をちょっと挙げてから、いきなりの左コーナーへ飛び込んだ。抜けると右の複合コーナーが待っている。

 車体をねじるように強引にインへ突っ込んだ。一瞬目をつむった。普通の車ならとっくにクラッシュしているが、カートはハンドルを切った分だけ素直に回る。5インチタイヤがきゅっと鳴ったが張り付いたように路面から離れない。

 その俊敏さ。まるでテレビゲームだが、振動と遠心力は本物だ。右へ左へと超高速で頭部が振られる。往復びんたを食らった感覚だ。胃の中で、お昼の山かけそばが大暴れした。



F1へ第1歩!?

午前はチャレンジコースで練習した(ゼッケン3)
午前はチャレンジコースで練習した(ゼッケン3)

 5周するとチェッカー旗が振られた。その横を駆け抜けた。右手を大きく振り返した。この晴れ姿、1度やりたかったのだ。セナも亜久里も皆カートの世界からGPへ育っていった。おやじもF1への第1歩を今踏み出したのだ。

 「どうでした?」。ピットに戻るとツインリンクもてぎのモータースポーツ課山崎智成さん(35)が心配そうに駆けてきた。「リヤのスポイラーを少し下げてくれる?」。「予選タイヤに変えてみますか」。

 冗談の通じる人だ。

 レーシングカートの最上クラスは最高速160キロ、体感はF1をしのぐ。レースへの登竜門といわれてきたが、今はややマニアックな世界だ。一方、手軽に扱えるマシンを使った町のレンタル・カート場が実は今ブーム。全国で50カ所はあるそうだ。

 「ちょうどその中間にあたるマシンがこれ。エンジンは発電機用の4ストロークです」と山崎さん。なんだホンダの発電機か、ASIMOの兄弟だ。初めは少し怖かったが、そう聞いて親近感がわいた。

 確かに車体は路面すれすれだが上体を立てるので目の位置が高い。横Gは強烈だが加速は穏やか、体感速度も快感の範囲内で、ちびるほどではなかった。



200cc9馬力

クイックなコーナリングがカートの持ち味
クイックなコーナリングがカートの持ち味

 8月のK-TAIは参加型のフェスティバルだから公式順位もない。昨年の最多周回チームは156周、平均時速106キロを記録したが、ちょっと走って後は「口の逆ハン」専門でも、レーサー気分は満喫できるのが楽しい特徴だ。

 今年からこのマシンを使った「4ストスポーツカートクラス」(予定150台)が土曜日(4日)に行われる。簡単な講習を受けて公開練習などに参加すれば出場できる。1チーム3~10人で本コース(4・8013キロ)を走る。

 車体は同一(2・2メートル×1・5メートル以内)でエンジンは200cc約9馬力。アクセルとブレーキしかないから運転免許証があれば誰でも乗れるし、競技ラインセンス所持者なら10歳から乗れる。

 事実おやじにも乗れた。

 初めは1周500メートルの「チャレンジカートコース」を走った。1周45秒が合格だがベストは力を抜いて走った10周目の52秒だった。午後から専用の北ショートコースに出た。



大きな円弧描く

走り終えて山崎さん(円内も)と談笑。ポーズだけは一人前だ border=
走り終えて山崎さん(円内も)と談笑。ポーズだけは一人前だ

 実はいきなりスピンした。しないはずだが、力んで最終コーナーに突っ込んだら後輪が滑り始めた。あわててブレーキを踏んだのが悪かった。ぎゅぎゅっと旋回して止まってしまった。猪突(ちょとつ)猛進、おれはサーキットのイノシシらしい。1度ピットインしてフォーミュラカーの経験もある山崎さんに頭を下げた。「こう走る」と教わったラインは、セオリーが全く逆だった。

 山崎さん 「F1などでは速度を落としてコーナーに入り、できるだけ直線的に加速できるラインを取ります。カートはなるだけ速度を落とさずコーナーに入り、大きな円弧を描きながら、最後のぎりぎりまで遠心力に耐えて抜けていく。切り返しのクイックさがカートの持ち味ですから、積極的に走ってください」。

 ボブスレーに似た、横Gとの戦いだ。目線は出口に向けるが、体はさらに次のコーナーでの踏ん張りに備え始める。教えられたラインを取ると約1キロのコースでブレーキはわずか3カ所。ミズスマシのように走り始めた。最高速は時速約80キロに達した。平均61キロ、1周59秒まで詰めた。どうだ! と思ったが、軽く流していたベテランは47秒。少し傷ついた。

 「ルマン」のマックイーンを気取って少しさみしげにピットに戻ると、もてぎの美人スタッフが「レーシングスーツが似合いますね、雰囲気出てます」。おお、走らなくてもこのスタイルならもてるのか。よし、やるぞ。「携帯教えて」。



山崎智成さん
山崎智成さん

 ◇ツインリンクもてぎ http://www.mobilityland.co.jp/motegi/◇K-TAI事務局 (電話)0285・64・0200 エントリーは締め切っているが参加枠に若干余裕。希望者は事務局へ問い合わせを。



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 【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥
プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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