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後藤新弥の「スポーツ&アドベンチャー」
2007年08月21日更新本物モトクロッサーで一気、宙へ!!…ん、オヤジはどっちだ!?
おろしたてホンダの「CRF150R2」操り、連続ジャンプ!!
アクセル全開。一気に宙に飛び出した、つもりまでは良かったが、どうやら発射角度を誤った。人間ロケットぶざまに転倒、チームメートがおやじの頭上を越えていく。ホンダの新型モトクロッサーCRF150R2を借りて、埼玉県川越市の「オフロードヴィレッジ」でモトクロスの練習をした。真夏の青空、白い雲。18歳の夏を取り戻した気分だったが、調子に乗りすぎて腰を打った。誰か助けて、立ち上がれない!
孫に慰められ
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| 「ぶざまに転ぶ初心者をかわし、豪快にジャンプした」なら、どんなにうれしかったろう。真実は逆だった。間一髪で宍戸さん(左)がかわしてくれた(越谷利彦撮影) | |
家へ帰った。
風呂からはって出た。
腰から背中に湿布薬を4枚張った。節々が痛くて、手を後ろに回すだけでもひと苦労だ。
2歳半の孫が寄ってきた。「どうちたの?」「バイクで転んだの」「えっ、どうやって?」。最近いちいちうるさくて、説明するのも面倒だ。写真を見せたら「これ、どっちがじったん?」。心の傷を逆なでするやつだ。こけてる方に決まっているだろう。
その途端に孫が顔色変えた、真顔になった。「違うよ、違うよ。じったんはこっちだよ!」。顔を激しく振りながら、ジャンプしている宍戸護さん(52=チーム・マイロード)の方を指さしている。小さな小さな指で、紙が破けるほど一生懸命指さしている。「じったん、かっこいい」。
何だか泣けてきた、何も分からないのか、分かった上で慰めようとしているのか。男心に泣けてきた。
150cc4スト車
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| 姿勢にもゆとり。タイヤが大きめのせいか、慣れたらコーナリングもスムーズ | |
ブオーン、ブオーンという、腹に響く音だった。150ccにしては生意気なほど太い音がする。興奮してコースに飛び出した。本田技研から借り出したおろし立ての08年型だ。
レース用だ。ありがちな公道用のオフロード改造車ではない。バネはしなやかで、動きは大きい。不用意にアクセルを開けたら上体がのけぞって「おっとっと」。焦ったが、数周するうちに「ここが重心点」という場所を尻が勝手に見つけ出した。その自然な乗りやすさが新鮮だ。
以前のこのクラスのマシンは挙動の変化も激しくて、独特のテクニックが要求された。面白いが上級クラスより難しい点があった。このCRF150R2はタイヤが大きめなので姿勢にも余裕がある。気がつけば軽く空を飛んでいる。
環境への配慮もあってモトクロッサーのエンジンは2ストロークから4ストロークに移行中だ。構造の違いから4スローク車は倍近い排気量が許されている。ただし2ストなら85cc、4ストなら150ccまでの最小排気量クラスでは、4スト車で市販されているのがまだこの型だけ。半未来形のマシンなのだ。それをさも得意げに乗り回した。
青春取り戻す
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| 宍戸さんの後輪に接触したらしい。靴底がはがれていた | |
炎天下。気温は40度を超え、5周に1度は水分補給を余儀なくされた。マシンより人間の方が燃費が悪い。土煙を立ててバンクを駆け抜けた。マシンを横倒しにして後輪を滑らせるような荒技は到底無理だが、慣れてくるといつの間にか近いことをやっている。
車体の進化が、青春の夏を取り戻させたのだ。
扱いやすい4スト車という安心感と乗り心地の良さでつい気が緩み、コーナーでエンストした。「低回転のトルクに頼らず、もっと積極的にエンジン回して」。MCFAJ(全日本モーターサイクルクラブ連盟)の元日本王者でチームのキャプテン宍戸さんがおやじを責め立てる。
ようし、それなら。
越谷利彦選手(36)にカメラを預け、華麗なジャンプの撮影を依頼した。ぐわっとアクセルを開けた。連続ジャンプの1つ目を何とか飛んだ。「もう一丁」。人間ロケットの気分になった。ばかなじったんだ。
団塊の再挑戦
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| 乗りやすさ抜群のホンダCRF150R2を前に。宍戸さん(中)と越谷選手(右) | |
後輪が横に滑った。まずい、またがかゆい、コースを外れたじょ。頂上手前で3つの思いが一瞬に交錯した。真後ろにいた宍戸さんが、空中でマシンをひねってかわしてくれた。つんのめるおやじの背中を、250cc車のごう音が間一髪で抜けていく。
恥をかいた。「すんません」「いやいや、あんなの普通だよ。それよりけがは?」大丈夫だと答えたが腰に激痛、立ち上がれない。にもかかわらず不思議なことに、痛みの奥から強い幸福感がわき出してくる。
オフロード車の耐久レースは経験あるが、ちゃんとしたモトクロッサーは初めてだ。少年時代からあこがれだったが「あのころ」は金も時間も根性もなく、改造車で河原を走るのがせいぜいだった。当時はその手の「かっこだけ」のモトクロス野郎も町に多かった。
そのコンプレックスを、跳ね返すことができたのだ。本物に乗ったのだ。エンジンもホンダの味だった。上限か、と思う回転域からもう一回り吹き上がる。名車S600を思い出す。
この4スト車なら、団塊世代の再挑戦ライダーも増えるに違いない。
でも孫の友情は偽物だった。腰痛じじいのまねをし始めた。いすから立つ時必ずいったん中腰になり、おかしな腰つきで「よういちょ」。大殿を笑いものにするとは何事ぞ。
怒ったら<歌詞>おしりかじり虫 を歌いながら「じったん、バイクにおちりかじられたヨ」と、母親の方にとことこ逃げていく。待て、待たんか。
後を追えない悲しさよ。腰の痛みは本格的だった。
◇ホンダCRF150R2 乾燥重量75キロ、前19インチ後16インチ、5速、水冷単気筒、最大17・9馬力(1万2500回転)49万6650円
◇ウエストポイント・オフロードヴィレッジ(電話)049・226・4141(http://www.westpoint.co.jp/index.html)
◇チーム・マイロード(電話)0422・34・7424(http://homepage3.nifty.com/myroad2/)
◇本田技研お客様相談センター(電話)0120・086819
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- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、60歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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