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後藤新弥の「スポーツ&アドベンチャー」

2007年12月27日更新

世界初!? 新潟・湯沢の野球場でスノーモービル初体験


球場の外壁斜面を一気に駆け上がり、無重力の快感を味わった。1月26、27日にはこの特設会場で全日本選手権第1戦も行われる(長谷川文撮影)
球場の外壁斜面を一気に駆け上がり、無重力の快感を味わった。1月26、27日にはこの特設会場で全日本選手権第1戦も行われる(長谷川文撮影)

 ふわっと宙に浮いた気がした。体重もマシンの重さも何も感じない、無重力の快感だ。新雪が飛び散った。世界で初めてだろう、新潟県湯沢町の野球場で「スタジアムスノーモービル」のスクールがオープンした。初心者大歓迎と誘われて、こわごわ出掛けた。すっかりはまった。スコアボードを背景にアクセル全開。へへへ、例によってちょっと腰を痛めたが、帰りは温泉。おやじは早くも正月気分だ。



全力加速で…

小野塚校長(後席)の操縦で内野を疾走。300cc受領170キロのマシンを大きく傾けて豪快な「バンク走行」を体験した
小野塚校長(後席)の操縦で内野を疾走。300cc受領170キロのマシンを大きく傾けて豪快な「バンク走行」を体験した

 「最後にあの外壁に挑戦したい」と、スクール校長の小野塚良彦さん(38)におずおずと持ち掛けると「元気ありますねえ」と苦笑しながら「付いてきてください」。話の分かる指導者だ。ブワッとアクセルを開けると、やや湿り気のある新雪が舞った。午後の太陽がヘルメットの中に差し込んできた。少しまぶしい。

  この野球場、夏は地元7チームが使うが今は一面の白銀世界。スタンド外壁に7メートルほどの雪の斜面ができている。そこに突撃し、逆落としに下る冒険走行がやりたかった。

 全力加速で斜面に突っ込むと、強烈なG(重力加速)に全身が上から押し付けられた。一瞬ひるむ。「やめるか」「いや、せっかく来たんだ。何か思い出を」。名誉欲と恐怖心が、心の中で醜く争うが、引き返すにはもう遅い。

 行くしかない。最上部が迫る。ビルの屋上のような高度感がある。「助さん角さん、もうこの辺でいいでしょう」。つぶやきながらアクセルを戻すと、その瞬間に宙に浮いた気がした。下降開始までのわずかな時間だが、61年間生きてきて味わったことのない浮遊感覚だ。その感覚が体に残った。いつまでも残った。



8の字が基本

高橋和雄さん
高橋和雄さん

 スノーモービルは22年にカナダで発明され、前にスキー、後にエンジン駆動のキャタピラが付いている。公道を走らないので運転免許は無い。雪国では雪上ツアーやレースを楽しむが都会人にはなじみが薄い。

 「けれどこれほど冬の自然とじかに接して、安全に楽しめる乗り物はない」。71年からの全日本選手権競技で最多8回王者となり、その後も普及活動を続けている高橋和雄さん(56=RSS高喜屋社長)は言う。

 体験スクールは各地にあるが、湯沢中央公園の野球場をメーンに新しい「雪の遊び場」を造ろうと企画。湯沢カルチャーセンターと協同で計画を推進し、22日に施設がオープンした。

 半日スクール(1万5000円)から団体、ナイター体験まで多様なコースを設定した。造れば人は来る。「フィールド・オブ・ドリームス」の雪原版だ。

 朝8時過ぎの新幹線で越後湯沢へ行った。「モービルスーツ」を着込むと、それだけでプロっぽい。レバー式のアクセルが右手、左手はブレーキ。原付き自転車より簡単だ。ズルッと動きだし、低速ならハンドルを切れば素直に曲がる。

 「動かすだけでなく乗りこなして欲しい。でも急がなくて大丈夫」。地元で育ち、モトクロス経験者の小野塚さんらが、生徒の体力を見ながら指導する。

指導員は生徒の体力を見ながら教えてくれた。左から小野塚校長、樋口賢一さん(39)岩井正好さん(38)
指導員は生徒の体力を見ながら教えてくれた。左から小野塚校長、樋口賢一さん(39)岩井正好さん(38)

 基本の基本が8の字走行。簡単なはずが、慣れるに従ってラインが乱れた。アクセル一定、曲がる時は「曲がる先に顔を向けて」尻をシートの内側の角に移して「体重移動」するのだが、右カーブが不安定。えいっとばかりに加速したら外側にひっくり返った。

 豪快に放り出された。痛いの痛くないのって、雪の上だから何も痛くなかった。腕に巻き付けていたキルスイッチコードが転倒と同時に外れて、エンジンは自動的に止まっていた。ほっとして口をとがらせた。「このマシン、癖が悪い」。

 癖が悪いのは自分である。小野塚さんが笑いながら後ろに乗り込んだ。タンデムで走る密着講習だ。「ほら、顔が向いてない。だから体重移動も不完全で、曲がりにくかったんです」。

 心当たりがある。小学校でカンニングを覚えて以来、顔を前に向けたまま横を見る癖が付いたのだ。カーブの出口を見てはいるが、顔が向いていなかった。



3級に合格!

2度転んだが、人馬とも無事。安全性は高い
2度転んだが、人馬とも無事。安全性は高い

 それでも3時間ほどで「3級ライセンス」に何とか合格。小野塚さんが後席で操縦し、マシンを斜めに立てたまま走る3次元の「バンク走行」も体験した。二塁から三塁へ、矢のようにマシンが滑る。飛んでいく。スコアボードが一瞬にして視界から飛び去った。

 公園敷地内にある陸上競技場への自由ツアーも楽しんだ。苦手の右旋回を猛練習した。後部がスライドし初めて面白い。調子づいてギュンと回したら、腰もギグッと悲鳴を上げた。心配無用、5カ所にある温泉の共通優待券が付いていた。

 最後に急斜面に挑戦して初体験を終えた。「体重移動さえ覚えれば自由自在です。スキーができなくても雪が楽しめます。町では子らの雪遊び教室も。次はご家族で」と小野塚さん。

 それはいい。正月には孫と来よう。やつを喜ばせてお年玉を巻き上げるのだ。

 ◇RSSスノーモビルランド湯沢 3月末までの金曜~月曜、祝日と年末年始(12月28日~1月6日)電話025・787・6600 http://www.yuzawa-culture.com/snowmobile.html



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プロフィル
後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、61歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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