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後藤新弥の「スポーツ&アドベンチャー」
2008年02月14日更新土のサーキットで疾走、ダートトライアル初挑戦
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| チャンピオンカー「ホンダ・インテグラ・タイプR」(2000CC)でコーナーを攻める。横には石井さん、晴れがましい一瞬だった(長谷川文撮影) |
非舗装のサーキットでタイムを競うダートトライアルの日本一、石井淳さん(43=本田技研主任研究員)に「ダートラ初体験」の指南を申し込んだ。週末、栃木・那須塩原の丸和オートランド那須で乗せてもらった。横滑りを抑え、ボブスレーのように正確にコースを回るチャンピオンに対し、おやじの方は生き方そのもの、めりもはりもなくずるずる走った。でも写真に速度は写らない。どうだ、かっこいいだろう!
怖がる暇もない
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| スパルタンな運転席に座るとつい「その気」になってくる |
石井さんの横に座って、ダートラを初体験した。
体の中に手を突っ込まれて奥歯を、いや背骨をガタガタと激しく揺すられた。砂利混じりのタイトコーナーが右に左に連続し、両側は土の壁。スピンでもしたら頭から突っ込んで車ごとのめり込むのか、はね返されて転倒するのか。最悪の事態が脳裏をかすめたが、怖がる暇さえ実はなかった。
1周約1・5キロの土のサーキット。ストレートでは時速150キロ近い。石井さんはコーナーでも速度を落とさない。しかも予想に反して、ほとんど横滑りをしない。コーナーに入ると同時に車の向きが変わり、もう加速している。両手でシートの縁を握り締めた。頭を垂直に保たないと車酔いで吐きそうになる。
こんな激しいのはボブスレー体験以来のことだ。
5年連続10回目
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| もう1つの社内クラブ「高根沢オートクラブ」をまとめる蛭田行男さん(43=右)と愛車をチェックする石井さん。この日は社員約30人が練習していた |
土を蹴散らして豪快にドリフトすると思っていた。
「FF車なので、常に前輪のパワーを最大限に生かすことが前提。前のコーナーからのロールの戻りやブレーキを的確に活用して、積極的に車の向きを変えようとしています」。一瞬の「自転」。だから無用な横滑りがない。だから速い。
全日本選手権シリーズ(SC部門)で昨年は8戦中5勝。5年連続10回目のチャンピオンになった。
岡山県出身、徳島大工学部時代にミニバイクレースをやった。ホンダ入社後に社内クラブ「ヤマト・モータースポーツクラブ」に入り、ダートラを始めた。
現在は栃木県の四輪開発センターでディーゼルエンジンの技術開発を担当している。乗るのは余暇。日本一になってからはタイヤのブリヂストンほかTEIN、ALEXなどのサポートを受けて始めたが「当初はマシンを含めて年間2、300万円の出費でした」。
こわごわ発進…
チャンピオンマシンに乗ってもいいという。コックピットに乗り込んだ。F1と同じ4点式ベルト、われながらかっこいい。こわごわスタートした。
すぐコーナーだ。「アクセルを戻し、ハンドルを切りながらコーナーに入るべし。車の向きが決まったらすぐ加速せよ」。作戦要務令は単純だが、つい舗装路と同じようにコーナー手前で向きを変えてしまおうとする。アクセルを踏むとドッカーンとパワーが出て大きく尻を振った。コースの真ん中で立ち往生だ。
「もっと細かなアクセルワークを」。石井さんが言う。靴を脱いではだしになると微妙な「セナ足」が少しできた。ザーッと砂利を飛ばすと気持ちいいが、逆ハンはタイムのロスだ。焦ると「ハンドルを何回転したのか、今前輪がどこを向いているのか」分からなくなる。
☆
「私も初めはそうでした」。毎晩1時間、駐車場に車を止めたままハンドルを何百回も回しては「いつでも本来の9時3時に手が戻るよう、感覚を体が覚えるまで練習しました」。
ぐるぐる、ぐるぐるを約2年間。人と同じ練習だけで道を究めた者はいない。もの静かで理知的な石井さんにも「こそ練」の時代があったのだ
ダイナミックなスポーツだからこそ、その話が一番感動的だった。
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【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥
- プロフィル
- 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、61歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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