<第85回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・9キロ)

 往路優勝の東洋大が復路も制し、通算11時間9分14秒で初の総合優勝を飾った。山下りの6区から早大とのデッドヒートが続いたが、8区の千葉優(2年)が振り切った。史上15校目の総合優勝は、最も遅い出場67回目で達成。高校時代は無名だった選手たちが、往路の5区で区間新をマークした柏原竜二(1年)に刺激を受け、佐藤尚監督代行(55)の作戦を忠実に体現した。部員の不祥事に揺れながら、力強く箱根路を駆け抜けた。

 優勝校が恒例とする胴上げはない。大手町で、アンカー高見を出迎えた選手たちは横1列に並び、沿道に頭を下げた。「スタートラインに立てたことに感謝しないといけませんから」と大西智。昨年12月1日に部員(2年)が強制わいせつで逮捕された事情から、派手な振る舞いは自粛した。

 往路を制し、復路は朝一番で芦ノ湖をスタート。山下りの6区に抜てきされた富永が、早大・加藤と激戦を演じた。前回区間賞男を相手に、5度も抜きつ抜かれつ。最後は振り切られたが、執念を示した。7区の飛坂は区間賞で差を詰め、8区の千葉が逆転。9区の大津が差を広げ、アンカーが締めた。復路は5人中4人が、同期の逮捕でショックを受けた2年生だった。

 激動の1カ月だった。不祥事直後は全体練習が中止。逮捕の2日後、川嶋監督が辞任した。練習再開後も故障者が相次ぎ、グラウンドに9人しかいない日もあった。佐藤監督代行は「辞退しなきゃいけないかと思った。最後の2週間でやっと、普通の練習になった」と振り返った。

 「出場させて良かったと思われる走りをしよう」。箱根路へ向け、これが選手たちのテーマになった。無名軍団ながら、1万メートル28分台の選手が5人そろい、上位10人の平均タイムは大会屈指。実力派が気持ちを合わせ、部の歴史を塗り替えた。初出場の33年、出場11校中10位で優勝した早大に2時間15分55秒も差をつけられた。苦闘の歴史は、76年かけてひっくり返した。

 レース後、都内の居酒屋で行われた慰労会。関係者に背中を押されて現れた川嶋前監督は「優勝おめでとう。1回でなく、2連覇、3連覇、4連覇を目指して頑張ってください」と涙ながらにあいさつした。出場67回目での初優勝。鉄紺のタスキをつないだ男たちの努力は、ついに結実した。【佐々木一郎】