箱根駅伝(来年1月2、3日)で17年ぶりの総合優勝を目指す早大が、「ガラスのエース」に命運を託した。各大学の区間エントリーが29日、関東学連から発表された。早大の渡辺康幸監督(36)は、山登りの5区に八木勇樹(2年)を起用。エース級の実力を持ちながら、駅伝で結果が出ない未完の大器で、最重要区間の勝負に出る。

 「山登りの選手と心中します」。かねて、こう言っていた渡辺監督は、5区に八木を入れた。この日、都内で行われた監督会議に出席し「プレッシャーをかけるのは、かわいそう。でも八木の起用は、結構自信がある。(4区まで)負けてきても大丈夫、競り合いでもいける」と言った。

 全10区間中、最長23・4キロの5区は、高低差864メートルを一気に駆け上がる難関。タイム差がつきやすく、現在の距離に延長された06年以降、4年連続で逆転劇が起きている。前回総合優勝を果たした東洋大は、5区の柏原が4分58秒差を大逆転し、往路優勝ではずみをつけた。

 のるかそるか。八木の配置はかけでもある。高校時代の実績はNO・1(3年時に国体5000メートル優勝)で、練習に限れば早大の誰より強い。だがメンタルに課題があり、これまでは試合で結果が出なかった。3大駅伝で1度も区間賞はない。

 11月15日の上尾ハーフマラソンも61位と惨敗。自信をなくしたが、渡辺監督から「お前を信じている。だから、お前はオレを信じれば、スーパースターにしてやる」と言われた。この日を境に、ハイペースで好きなだけ飛ばしていた練習でも、監督の指示に従うようになった。自然と、信頼関係も深まった。

 以来、練習は万全で、自信も戻った。「今の状態なら、誰が相手でも大丈夫だと思う」とまで、言えるようになった。順当な展開なら、上位でたすきを受け、「東洋の魔神」こと柏原から追われる展開が濃厚。八木が本来の力さえ出せば、早大はトップで芦ノ湖にたどり着く。【佐々木一郎】