<第86回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)

 日大のダニエル(4年)が前人未到の「50人抜き」の偉業を成し遂げた。13位でタスキを受け取ると、前半飛ばして後半失速した昨年の反省から、慎重にスタートを切った。ごぼう抜きが始まったのは4・3キロ過ぎから。しかし、タイムは伸びなかった。15キロ過ぎの勝負どころ権太坂を越えても先頭の明大は見えなかった。11人を抜いて2位に浮上、4年間通算50人抜きを達成。しかし、先頭には立てなかった。

 ゴール後の第一声は「いやー、きつかった」。3年連続の2区。昨年は不滅とも言われる20人抜きの快走をみせた。4年の今年は怪物の集大成に期待がかかった。レース前は「5分台を出したい」と、同じケニア人留学生の先輩で山梨学院大のモグスが昨年マークした区間記録(1時間6分4秒)更新を目標に掲げていたが、1分33秒も及ばなかった。「モグスのいない今年は1位でタスキをつなぎたかった」と反省の弁が続いた。

 来日して4年。年を重ねるたびに、日本人のような心を身につけた。「デビューした時は、ただタスキをかけて走っただけ。今はピンクのタスキに100万人の思いが入っている」。1年生の時に先輩に買ってもらった「Confidence(=自信)」という500円のブレスレットは、毎年のように「Heart(=心)」「Desire(=望み)」と自ら買い足してレース時に着用した。ロック歌手の矢沢永吉の大ファンだが、紅白のサプライズ出演は「大事な大事なレース前なので見ないで10時に寝た」と我慢した。卒業後は富士通に入社する。「まずはトラックで世界と戦いたい。世界で戦うスキルを持ったら、マラソンに行きたい。ロンドン五輪が終わってからになると思う」。箱根で育ったダニエルが世界へと羽ばたく。