<高校ラグビー:黒沢尻工27-15札幌山の手>◇30日◇2回戦◇花園

 南北海道代表の札幌山の手はBシードの黒沢尻工(岩手)に惜敗し、道勢21年ぶりの2回戦突破を逃した。前半を12-15で折り返し、後半5分にはPGで同点にするほぼ互角の展開。勝ち越しを許し、5点差の同10分過ぎからは猛攻で相手をゴール前にくぎ付けにしたが、あと1歩及ばなかった。悲願のシード校撃破はならなかったものの、強豪を真っ向勝負で追い詰めた。

 札幌山の手フィフティーンの悔し涙が止まらなかった。道勢初のシード校撃破はそこまで見えていた。佐藤幹夫監督(50)は「これまでで一番惜しい試合だった。確実に自力がついてきました」。シード校との対戦は7度目。初めてぶつかった02年は伏見工(京都)に0-77で完敗した。それがこの試合は12点差まで縮めた。敗れたが大きく進歩した姿を花園に刻んだ。

 「赤べこ軍団」の異名を持つ相手を追い詰めた。前半を12-15で折り返した後半5分、SO鈴木陸(1年)が15メートルのPGを決め同点。その3分後に勝ち越しのトライを許したが、心は折れなかった。FW戦で真っ向勝負。ゴールラインあと1メートルまで何度も迫った。ただ、その1メートルが遠かった。勝負どころの反則で得点機を自ら手放した。フッカー佐藤諒太主将(3年)は「FWで何度もチャンスがあったけど、前に向かおうという気持ちが空回りしてゴール前のミスにつながりました」と唇をかみしめた。

 「先生弁当」でスタミナをつけてきた。今春から体調管理の一環としてラグビー部の寮生8人に佐藤監督が毎日、昼食用の手作り弁当を手渡してきた。「毎日2升(約3キロ)の米を炊いています」。佐藤監督は学生時代に国士大の学生食堂でアルバイトしていた。寮生のSO鈴木は「先生の料理はバランスもいいし、うまいです」と話す。毎週日曜夜には自宅に寮生を招き、すき焼きやしゃぶしゃぶなどを振る舞った。足りない食材は自身の食費を切り詰めてやりくりした。寮生唯一の3年生、WTB久保匠は「最後に恩返ししたかったです」と感謝の言葉を口にした。

 今回花園を経験した1、2年生の主力は7人。トライを挙げたWTB先谷槙尚人(2年)は「先輩のためにトライができました。来年は先輩たちのためにもシード校を倒します」と誓った。歴代の先輩たちが涙をのんできた悲願を成し遂げるため、花園に戻ってくる。【黒川智章】