<高校総体:フェンシング>◇31日◇青森・むつ市ウェルネスパークしもきた克雪ドーム◇男子フルーレ決勝

 フェンシング男子フルーレ個人で、龍谷大平安(京都)・鈴木一平(3年)が初優勝を飾った。同校にとって、北京五輪銀メダリスト太田雄貴(25)以来8年ぶりの個人タイトルになる。偉大な先輩とプレースタイルは異なるが、179センチの長身と高い潜在能力は無限の可能性を秘める。太田の後継者として将来が期待される。

 鈴木の初タイトルは相手の大分豊府・大石利樹(2年)の途中棄権で転がり込んできた。先行を許したものの、立て続けにアタックを決めて追いついた直後だった。鈴木は「最後のインターハイで優勝を狙っていたのでうれしい。それだけの準備はしてきました」と胸を張った。積み重ねた練習で得た自信と体力が、決勝の大舞台で発揮された。

 自分の特徴に気づいてから飛躍的に成長を遂げた。179センチの長身に加え、長いリーチを生かしたプレースタイルに目覚めた。「自分の間合いでリーチを使ってプレーすれば負けない」。相手にとって遠い距離でも自分には攻撃エリアだった。受け身に回っても冷静に攻撃をさばき、確実にポイントを重ねた。竹内智一監督は「やっと才能が花開いた。リーチや身長、細身の体形。素質はあったのに自分でそれが分かっていなかった」と目を細めた。

 日本フェンシング史上初の五輪メダルをフルーレ個人で獲得したあこがれの先輩太田と同じタイトルを手にした。大会前の合宿には太田が訪れ「インターハイでがんばってこい」とエールを送られたという。感情を表に出さない控えめな鈴木も、太田からのげきには感じるものがあった。合宿では龍谷大平安OBたちの胸を借りて「今までで一番練習した」と万全を期し、史上初のインターハイ3連覇を果たした03年の太田以来となる個人優勝を同校にもたらした。

 竹内監督は「とてつもない素質を持っている。五輪でメダルを取れる」と将来性に太鼓判を押した。鈴木は「オリンピックより目の前の試合を1つ1つ勝っていきたい。次は団体を取りたい」。同じく03年以来の個人、団体制覇は、鈴木が原動力になる。【豊本亘】