<高校総体:柔道>◇13日◇秋田・秋田県立武道館

 柔道女子63キロ級で、高岡龍谷(富山)・佐野賀世子(3年)が初優勝した。全5試合中3試合で2分以内に一本勝ちするなど強さを発揮。決勝も開始早々に内またで技ありを奪って優勢勝ちした。昨年9月の右肘剥離骨折を乗り越えて、初のタイトルを獲得。前日12日の団体優勝と合わせて2冠を達成した。

 3回の一本勝ちに佐野の強さが凝縮されていた。初戦の2回戦は開始59秒に合わせ技、準々決勝は1分36秒で横四方固め、準決勝は開始19秒に袖つり込みと、全て2分以内で料理した。決勝は優勢勝ちだったが、開始34秒に豪快な内またで技ありを奪う圧勝だった。身長167センチで高い身体能力も併せ持つ逸材は「決勝で一本勝ちできなかったのは納得いかない。でも初めての優勝だから家族や監督たちに恩返しできたかな」と愛くるしい笑顔で振り返った。

 最後まで攻撃の手を緩めない豊富なスタミナは、昨年のリハビリ中に育まれた。同9月の全日本ジュニア選手権準決勝で右ひじを剥離骨折。約4カ月間、サーキットとウエート練習だけに取り組んだ。期間中は、筋肉が落ちてどんどん細くなる右腕に涙も流した。だが、今年に入って道着に袖を通したとき、今までになかった強い下半身ができていた。新たな武器を手にした佐野は右肘の回復とともに柔道がレベルアップ。昨年2位から念願の頂点に立った。

 強くなりたい一心で、中学入学とともに、親元を離れ、地元の私塾「さくら柔道場」に入寮。部活動以外に午前6時から40分、午後7時半から1時間半の自主練習を5年半、ほぼ休むことなく続けてきた。テレビも見ない。携帯電話も持っていない。暇があれば女子日本代表のDVDを見て技を研究。今どきの高校生には珍しい柔道漬けの生活が、佐野の才能を大きく開花させた。

 将来の目標は「オリンピックに出ること」。来年から山梨学院大に進学予定で再び寮生活が始まる。佐野は「今までほとんど親と過ごした記憶がないので年内中に実家に戻って親孝行したい」と笑顔を輝かせた。【豊本亘】