<高校総体:競泳>◇20日◇岩手・盛岡市立総合プール

 男子100メートル平泳ぎで、県岐阜商(岐阜)の加納雅也(3年)が3連覇を果たした。決勝では前半を2位で折り返すも、伸びのある大きな泳ぎを武器にラスト10メートルで逆転。1分1秒94で自身の持つ大会記録(1分1秒70)更新は逃したが、ポスト北島に名乗りを上げた。学校対抗得点の男子は日大豊山(東京)が12年ぶり7回目の優勝、女子は湘南工大付(神奈川)が初優勝した。北東北4県による共同開催の今大会は、24日間にわたる熱戦の幕を閉じた。

 加納の体が、先行する後藤をとらえた。残り10メートル、グイッと前に出ると、タッチの差でゴール。優勝を確認すると派手にガッツポーズし、スタンドに手を振った。3連覇への重圧から、予選は「ガチガチになり」5位。決勝も勝ちを意識して苦しんだだけに「本当にうれしい」。重圧から解放されて、涙までみせた。

 「周囲からも(3連覇を)言われ、苦しかった」と振り返る。春先からタイムが伸びず、フォームも崩して悩んだ。4月の国際大会代表選手選考会、5月のジャパンオープンでは1学年下の山口観弘(志布志DC)に敗れた。「下に負けるのは屈辱だった」。目標だった北島康介の持つ高校記録(1分1秒34)更新も、山口に先を越された。

 ライバル山口は、世界ジュニア(ペルー)出場で今大会不在だった。だからこそ「絶対に負けられなかった。勝つことしか考えていなかった」という。自身の持つ大会記録更新もならず「タイム的には満足していない」と話しながらも「今回は勝つことが最大の目標だったので」と、3連覇の大きさを口にした。

 指導するのは糸井統監督(40)。ポスト鈴木大地として92年バルセロナ五輪男子200メートル背泳ぎ4位、96年アトランタ五輪同5位とメダルに迫った。世界を知る同監督は「10年に一人の逸材。泳ぎのバランスがいいから、まだまだ伸びる」と目を細めた。来春の卒業後は東京の大学に進学し、世界を目指す予定だ。

 高校3連覇は果たしたものの、加納の戦いは終わらない。9月の国体では帰国した山口と直接対決。「負けたくない。前半から積極的にいって、タイムも狙いたい」と高校王者のプライドをみせた。北島を筆頭に世界でもトップレベルにある日本平泳ぎ陣に、加納も割って入るつもりだ。【荻島弘一】