<全国高校総体:陸上>◇2日◇大分銀行ドーム◇男子やり投げ

 小南拓人(札幌第一3年)が最後の6投目で北海道高校新となる70メートル42をマークし、逆転で初優勝を決めた。この種目で道勢が日本一になるのは14年ぶり2人目。ただ1人の70メートル超えで、昨年の17位から大躍進した。道予選でマークした道高校記録の70メートル26を14センチ更新し、競技歴2年目ながら今季高校生ランキング1位に躍り出た。

 最終投てき6投目。投げた瞬間「よっしゃ、行けー!」と絶叫した。小南の声と思いを乗せたやりは、ぐんぐん伸びた。70メートルをオーバーし、会場は「お~」とどよめいた。4位からの逆転劇。「友達や先生、家族、応援してくれた他校の陸上部の選手の顔を浮かべて投げた」。札幌第一から今大会に出場した選手は、小南ただ1人。周りの応援を力に変えた。「表彰台の一番高いところに立つことしか考えてなかったけど、実際に立つと最高の気分です」と興奮気味に話した。

 「甲子園に行くよりも、うれしい」。1年の時は野球部員だったが、昨年から陸上部に転向し、競技を始めた。大町和敏監督(48)からの誘い文句は「お前なら日本一になれる」。「最初はやり投げをするか悩んだ。でも、こんなにうれしい気分になることができて、先生には感謝したい」と話した。

 最後まで、けがを隠し続けた。大町監督は「実は第1肋骨(ろっこつ)にヒビが入っている」と明かした。7月の南部忠平記念(札幌)では、全6投を投げきらなかった。小南はその理由を「ちょっと右肩を使い過ぎているから」と話していた。周囲に心配を掛けたくなかった。大町監督は「全道大会の後はやりも持てないくらい痛がっていた。精神力が強い」と感心する。それでも試合後、小南はニヤリと笑いながら「大丈夫ですよ」と最後まで口を割ることはなかった。

 「本当は大会記録を狙っていた。70メートルをコンスタントに出せるようになりたい」と今後の抱負を口にした。優勝のご褒美は、大好きな温泉。今回は温泉で有名な別府市内に宿泊している。試合前までは筋肉が緩むため、長時間の入浴を禁止されていた。「一晩中入っていたいくらい温泉は大好き。今日はゆっくり入ります」。王者は足取り軽やかに会場を後にした。【保坂果那】

 ◆小南拓人(こみなみ・たくと)1995年(平7)7月26日、札幌市生まれ。札幌屯田西小1年で野球を始め、軟式の札幌屯田中央中でのポジションは投手や一塁手など。札幌第一では1年の2月まで野球部員でマネジャーだった。家族は両親と兄、姉。172センチ、80キロ。