<柔道:グランドスラム東京2011>◇2日目◇10日◇東京体育館◇男子81キロ級

 日本柔道の弱点だった男子81キロ級に、超新星が現れた。これまで無名の川上智弘(21=国学院大)が、決勝で世界ランク2位のレアンドロ・ギルエイロ(28=ブラジル)を破り初優勝。一気にロンドン五輪代表候補に浮上した。

 表彰台で君が代を聞きながら、川上はスタンドに笑顔をみせた。自分でも予想していなかった優勝。ロンドン五輪について聞かれると「きのうまで自分には関係ない話でしたが、今日で一気に近づきました」と言ってのけた。「(16年)リオを狙ってもリオはないと思う。ロンドンを目指します」。高らかに宣言した。

 1回戦から決勝まで6試合で5試合一本勝ち。相手に先行されても、焦らず攻めて逆転勝ちした。決勝も世界2位に先に有効を奪われたが「逆に積極的に行けました」。残り1分10秒、谷落としで一本を奪って小さくガッツポーズ。格上相手にも「びびることはなかった。勝てない相手じゃないと思った」と言った。

 今年8月の世界選手権で81キロ級が惨敗した後、篠原監督はユニバーシアードで優勝した川上の名を挙げて「若くていきのいい選手をどんどん呼ぶ」と言った。「びっくりしました」と川上。その後、欧州転戦にも招集されて経験を積んだ。「期待されてるのが、うれしい」。そして、初めてのビックゲームでいきなりチャンスをものにした。

 篠原監督は「これで川上が少し出た」とロンドンへの最短距離にいることを口にした。獲得ポイントがなく五輪出場資格の22位以内は遠いが、今後は積極的に試合に出てランキングを上げる予定。吉村強化委員長も「川上が世界の強いヤツらに勝ったのは大きい。これからガンガン鍛える。81キロ級は勝たなくていいわけじゃないんだから」と金メダルを期待して話した。

 「もちろん夢ではあったけれど」と五輪について話すが、今は「はっきりと目標になりました」。外国勢にも見劣りしない178センチの長身に、端正なマスク。ロンドン五輪を目指す日本柔道界に、新しいスターが誕生した。【荻島弘一】