<柔道:グランドスラム東京2012>◇最終日◇2日◇東京・代々木第1体育館◇女子78キロ超級

 五輪金メダリストを撃破した。女子78キロ超級で、田知本愛(めぐみ、23=ALSOK)が2年ぶり2度目の優勝を果たした。決勝でロンドン五輪金メダルのオルティス(キューバ)に臆することなく攻めて、片手絞めで一本を奪った。五輪落選の悔しさをバネに、16年リオ五輪へ最高のスタートを切った。

 思いを、ぶつけた。田知本は向かっていった。相手は、自分が出られなかった五輪で頂点に立ったオルティス。「絶対に勝ちたい」と、闘志が前に出た。後ずさりした相手が、指導を受ける。なおも攻めて、最後は片手絞めで「まいった」を奪った。開始2分45秒。金メダリストを破り、自分が頂点に立った。「悔しさをぶつけることができた。これがスタートだと思う」と、そっとはにかんだ。

 絶好の機会だった。五輪後に引退した銀メダリスト杉本美香さんとの争いに敗れて、ロンドンの舞台に立てなかった。70キロ級代表だった妹遥の応援には行くも、試合が終わるとすぐに帰国した。悔しくてテレビもつけられない。超級の試合を見たのは、繰り返し放送されていた3日後だった。見たら「余計に、自分が出たかったと思いました」。

 結果に臆病だった自分と決別した。内容こそすべてと考えた。すると、五輪前まで縮こまっていた柔道が変わった。この日は4試合中3試合で一本勝ち。攻めの柔道は、最後まで消えなかった。杉本さんの引退で最重量級の第一人者となったが、増したのは責任感だけ。「代表は1人。そこを勝ち取りたい」。見た目も口調もおっとり型。だが、彼女の文句は、誰よりも強気だった。【今村健人】