<世界柔道>◇23日◇女子48キロ級◇パリ・ベルシー体育館

 女子48キロ級で、世界ランク1位の浅見八瑠奈(23=コマツ)が2連覇を決めた。決勝は昨年の東京大会に続き、同2位の福見友子(26)との顔合わせ。2大会ぶり頂点を狙ったライバルを返り討ちにし、来年のロンドン五輪出場に前進した。男子66キロ級でも海老沼匡(21)が金メダルを獲得。同60キロ級は平岡拓晃(26)が銀メダルと、この日の3階級すべてで日本勢がメダルを獲得した。

 しのぎを削るライバルを再び退け、浅見が女王の座を守った。初戦から順当に勝ち上がり、決勝は2大会連続で福見との対決。積極的に足技を仕掛け、残り1分で相手の指導を誘った。そして残り24秒。小内刈りで有効を奪って優勢勝ちした。「2連覇したらロンドンに一番近い存在となる。2連覇できるのは私だけ」。誇りを持って臨んだ。五輪前哨戦と位置づけられる今大会を制し、各階級1枚しかない五輪切符を、グッと引き寄せた。

 決して万全の状態ではなかった。連戦が続き、精神的な重圧も重なった。今までケガをしなかった体が悲鳴を上げ始めた。今まで水がたまることが多かった左膝に加え、5月ごろからは右膝も痛んだ。病院で、滑液包炎(かつえきほうえん)の炎症と診断され、痛み止めをのみ始めた。「ヒアルロン酸を注射したり、いろいろやっています。練習量が増えたからかなぁ」。プラスにとらえた。

 女王として、心に期するものがあった。世界選手権を制した直後の昨年10月の全日本学生体重別団体で、敗れた。父三喜夫さんに「世界女王が学生に負けるのか。世界女王って弱いんだな」と突き放された。「簡単に負けてはいけない」。あらためて心に刻んだ。

 社会人になった今年、大人になってきた。初任給では父に腕時計、母に商品券を贈った。自分には服を買うようになった。「(大学時代の)山梨ではジャージーで良くて、東京に来ても電車にジャージーで乗っていたら、みんなに『それはやめて』と言われて…。自分も最近は、変だったなと思ってます」。

 来年のロンドン五輪を、柔道人生の集大成と決めている。「今は終わりでも良いかなと考えている。気持ちはもうおばちゃん。ロンドンに行けなくても、今は続けるつもりはないです。そこまでに集中したい」。谷亮子が一時代を築いた日本のお家芸の48キロ級で、浅見が頭ひとつ抜け出す存在となった。【今村健人】

 ◆浅見八瑠奈(あさみ・はるな)1988年(昭63)4月12日、愛媛・伊予市生まれ。3歳から伊予道場で柔道を始めた。新田高から山梨学院大に進んで急成長。07、08年にベルギー国際を連覇するなど国際大会で強さをみせた。昨年の世界選手権で初優勝、今春コマツ入りした。得意技は背負い投げで、崩してからの寝技も武器。153センチ。