渡部香生子(18=JSS立石)が昨年に続く3冠に輝いた。女子200メートル個人メドレーで2分9秒81と自身の日本記録を0秒77更新し、50、100メートル平泳ぎに続いて優勝した。昨年2月から歯の矯正に着手。チャームポイントの八重歯は消えたが、今月の早大入学とともに前歯は整った。かみ合わせは良くなり、泳ぎにもプラスに。今日11日からは本命の200メートル平泳ぎが開始。昨年を超える4冠を目指す。

 女子高生から女子大生になって、さらに強さが増した。200メートル個人メドレー決勝。渡部は前半から自身の日本記録を上回るペースで進む。2分9秒81。自身の記録を0秒77更新するとともに、日本人初の2分9秒台の領域に突入した。「世界選手権に向けて自信になった」。ゴール後は右手で水面をたたいて「香生子スマイル」を浮かべた。

 2年連続の3冠。高校1年で出場したロンドン五輪時と比べ、体つきは別人のように変化した。昨年から週2回、本格的な筋トレを開始。かつてのTシャツの肩、腕の部分はピチピチになった。培ったパワーは前半のスピード、後半の粘りにつながる。竹村吉昭コーチは「大きくなった筋肉を使えている。じゃまになっていない」と肉体改造の効果を口にした。

 4月に早大入学。女子大生の「香生子スマイル」に、八重歯はもうない。昨年2月から歯の矯正を続ける。今はやっと前歯が整い、器具も取れた。美的な視点はもちろん、来年リオデジャネイロ五輪までにかみ合わせを良くしたいとの狙いもある。日本水連の元島清香ドクターは「科学的根拠はないですが、一般的に力は伝わりやすくなる」と説明。魅力的だった八重歯が消えたが、その分、スピードはさらに増している。

 この日の日本新記録は、13年世界選手権の銅メダルタイムまで0秒36、ロンドン五輪の銅メダルまで0秒86に迫る。平泳ぎとともに世界のメダルがはっきりと視野に入ってきた。それでも女子大生と大人になった渡部に満足感はない。「このタイムだと(世界大会の)決勝レースに出て終わってしまう。1つ1つの種目のタイムアップを目指す」。今日11日から本命の200メートル平泳ぎ予選が始まる。まずは昨年超えの4冠で、夏の世界選手権に勢いをつける。【田口潤】

 ◆渡部香生子(わたなべ・かなこ)1996年(平8)11月15日、東京都葛飾区生まれ。4歳から水泳を始める。中学3年の11年ジャパンオープンで100、200メートル平泳ぎの2冠を獲得。12年日本選手権200メートル平泳ぎで2位に入り、ロンドン五輪代表。ロンドン五輪は準決勝敗退。13年世界選手権は200メートル個人メドレーで準決勝敗退。昨年パンパシとアジア大会の200メートル平泳ぎで金メダル。早大1年。167センチ、59キロ。