世界5位の錦織圭(25=日清食品)が、2連覇まで残り2勝と迫った。昨年2回戦でフルセットを競った同16位のバウティスタ(スペイン)に、今年も最終セットにもつれ込んだが、6-2、3-6、6-1の1時間41分で勝利。25日に予定されている準決勝では、昨年の全仏オープン1回戦で敗れた同28位のクリザン(スロバキア)と対戦する。

 2連覇に向け、最初の難敵を乗り切った。強い錦織、弱い錦織の両面が交差しながら、最後は勝利をたぐり寄せた。何度も20本以上のラリーが続き「お互いにとって、すごい試合だった」。最後は、世界5位の貫禄で、昨年の2回戦で対戦した時と同様に、フルセットで片付けた。

 第1セットは完璧だった。スタートから8ポイントを連取し、2-0のリード。課題だった第1サーブが入る確率は、84%と驚異的な高率をたたき出した。リターンも相手の第1サーブに対し、56%の確率でポイントを奪い「サーブもリターンも良かった」。

 しかし、テニスとは怖いスポーツだ。技術よりも精神的な部分が影響を与える。第2セット、錦織の第1サーブの確率が41%に落ちた。それでも技術的には十分に戦えたが、心にイライラがたまった。確率が落ちたことに気持ちがとらわれ、集中力が低下し、ミスを連発した。

 それでも「集中力を高めて凡ミスを減らし、第1セットのように攻撃的にプレーすることができた」のが最終セットだ。我慢のテニスという新たな引き出しを開け、相手のミスを引き出した。オプションの多さ。これがトップ10とそれ以外の選手の大きな差だ。

 53年に始まった伝統と格式のある大会で昨年、アジア人として初の栄冠を手にした。今年は2連覇がかかる。昨年稼いだ500点は、今大会後に失効。2連覇でも世界ランクの5位は変わらない。その重圧はいやが応でものしかかった。

 この大会で連覇を達成したのは、9選手のみ。05年から5連覇、11年から3連覇を達成した赤土の王者ナダルは、今大会3回戦で敗れた。ナダルを除く連覇は、95~96年のムスター(オーストリア)以来となる。そのムスターは、95年バルセロナを制した勢いで、全仏も初優勝を遂げた。

 錦織は昨年、続くマドリード・オープンも決勝に進み、全仏前にすべてを使い果たしケガもした。しかし、今年は体は万全。次戦は、昨年の全仏で敗れたクリザンと難敵だが「準決勝も力強いテニスをしたい」。ムスターと同じ流れで今大会2連覇で、全仏で4大大会初制覇につなげたい。

 ◆バルセロナ連覇と全仏優勝 今大会を2連覇以上した9選手の中で、連覇した年に、全仏も優勝したのは2人。89~90年のゴメス(エクアドル)は90年全仏で初優勝。ナダル(スペイン)は、05年にともに初優勝を遂げてから、08年まで両大会を同じ年に制し続けた。09年は全仏4回戦で敗退。10年はバルセロナを欠場。しかし、11年から再び両大会で3連覇を遂げた。