名門の意地をみせた。グレコローマン66キロ級で、13年高校選手権覇者の沢田夢有人(日体大2年)が大学生となっての初タイトルを獲得した。

 準決勝の相手は元世界女王の山本美憂(40)の長男アーセン(18)。「レスリング一家の最終兵器」として注目が集まる中で、「絶対勝ってやろう」と燃えていた。「他の大学に比べて、練習量は1番」と名門の自負があった。強豪国のハンガリーで練習を積むアーセンが相手でも、一歩も引かなかった。

 勝負を決したのは第1ピリオドの2分20秒過ぎ。消極的姿勢を取られたアーセンのバックについてのグラウンドの攻防。「得意。チャンスだ」と相手の体を回すローリングを仕掛けた。飛龍高1年の時に、12年ロンドン五輪代表の長谷川恒平から直々に教わった必殺技。高校時代に鍛え上げた技術で「1回決まれば、何度でもいける」と右に左に4回転させて、一気に8点を奪取。8-0のテクニカルフォール勝ちを決めた。

 13年高校選手権を制した逸材も、大学に入ってからは苦しんだ。名門の意地を見せて注目株を一蹴し、「この優勝でスタートラインに立てた」と喜んだ。

 なお、沢田のセコンドについたのは日体大出身で、グレコローマン60キロ級でロンドン五輪銅メダリストに輝き、16年リオデジャネイロ大会は66キロ級で出場を狙う松本隆太郎(29)。「うちの選手も良い環境でやっている。自分の力を出せば負けないと思っていた」と自信を持っていた。アーセンもリオ五輪を狙うが、この階級のエースは間違いなく松本。教え子に的確な指示を与え、間接的ながらその実力を見せつけた。