競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチ(HC、51)が25日、辞意を示唆した。日本水連が6月の役員改選で上野広治競泳委員長(56)の交代を検討していることを疑問視した。20年東京五輪までHC続投が決まっているが、同氏と二人三脚で強化を進めてきただけに「上野さんを代えるなら、僕も代えて欲しい」と、日本水連の検討している人事案について批判的な考えを明確にした。

 北島を五輪2大会連続2冠に導いた平井HCの同氏への信頼は厚い。「日本が強くなるため、現場ありきで考えてくれた。強引な案も認めてくれた」。北島の快挙も上野氏の存在があってこそで「上野さんとは一蓮托生(いちれんたくしょう)」と続けた。世界選手権(ロシア)は2カ月後、リオデジャネイロ五輪は1年後に迫る。「この時期の(競泳委員長の)交代は現場が混乱する」と不安を口にした。

 上野氏は、メダルゼロに終わった96年アトランタ五輪の惨敗を受けてHCに就任。チーム内がバラバラだったことを反省し「個からチームへ」を提唱。チームの結束力と一体感を高めることで、水泳ニッポンを復活させた。07年に競泳委員長に昇格。00年シドニーから12年ロンドン大会まで計28個のメダルを積み上げた。

 上野氏は昨年、東京都協会会長に就任。強化責任者と日本水連の加盟団体のトップを兼ねていることに批判の声もあった。明日27日、日本水連の役員候補者選定委員会が開かれる。そこで上野氏の交代案が出る可能性が高い。泉正文専務理事は「上野さんが日本の強化を引っ張ってきたし、解任はありえない。ただ(兼任し、競泳委員会を統括する)強化本部長に専任してもらいたいとの意見はある」と話した。

 日本水連の新体制は来月28日の評議員会、理事会で決定する。平井HCは「上野さんありきで、信頼関係を持ってやってきた」と、改めて同氏の存在の大きさを強調した。

 仮に「上野-平井」体制が崩れれば、今後の強化に大きな影響を及ぼすことは間違いない。