テニス界の人気者“アフロ男”が大金星だ。ドレッドヘアが特徴的な世界102位のダスティン・ブラウン(30=ドイツ)が、4大大会14度の優勝を誇る同10位のラファエル・ナダル(スペイン)に7-5、3-6、6-4、6-4で勝ち、2年ぶりの3回戦進出を決めた。

 腰まで伸びたドレッドヘアが揺れる。放った13本目のサービスエースが、大金星を飾った。ブラウンは顔を覆い、何度も勝利の雄たけびを上げた。「センターでナダル相手に勝てて夢のような瞬間だ。生涯最高の気分」。大歓声に包まれた聖地センターコートで喜びを爆発させた。

 196センチの長身を生かした最高時速213キロのサーブにドロップショット。いちかばちかの高速リターンかと思えば、逆回転をかけ角度をつけたアングルショットと、聖地を舞台に切った張ったの大立ち回り。まさに技のデパートで、観客を味方に付け、ナダルを翻弄(ほんろう)した。

 2週前の前哨戦ゲリー・ウェバーオープン(ドイツ・ハレ)2回戦で、錦織に敗れた。「僕は悪くなかった。でもケイが信じられないプレーをした」。だが、その試合で「このレベルで戦える」と手応えをつかみ、今大会は予選3試合を勝ち抜いた。その勢いで13年に並ぶ自身4大大会最高の3回戦進出だ。

 父がジャマイカ人で母がドイツ人。趣味はもちろんレゲエで、ドレッドヘアは、その象徴だ。風貌とプレースタイルは異質だが「人がどう思おうが、自分は好きなように生きる」。コーチもおらず、自分の感性でプレーする。ツアー優勝はまだないが、これでナダルとは2戦2勝だ。

 脇腹に父の顔の入れ墨を施す。「なかなか会えないから」。5年前にジャマイカからドイツに国籍を変更。その時、欧州を転戦するためにと父からキャンピングカーを買ってもらった。ブラウンは何度も、その父の入れ墨をたたき、聖地でともに勝利を祝った。【吉松忠弘】