女子高飛び込み準決勝で板橋美波(15=JSS宝塚)は305・30点の16位に終わり、12位以内に与えられる来年リオデジャネイロ五輪出場権を逃した。4本目に女子では世界でただ1人武器にする「前宙返り4回半抱え型」に挑戦したが失敗。得点を伸ばすことができなかった。決勝進出も逃し、メダルの夢も消滅。今後は、9月のアジア予選(マレーシア)で来年リオデジャネイロ五輪出場権獲得に再挑戦する。

 プールに大きな水しぶきが起きた。女子高飛び込み準決勝の4本目。板橋は女子では世界初の大技「前宙返り4回半抱え型」に挑んだ。五輪出場権のかけた大勝負だったが、踏み切りのとき、わずかに右に体が傾く。回転はずれ、傾いたまま入水した。失敗。得点は100点満点の55・5点。16位に沈み、12位以内の五輪出場権を逃した。

 3本目までは予選と同じ展開だった。2、3本目に失敗。後のない4本目で、大技に頼った。予選では見事成功し86・95点の高得点で、19位から6位に順位を上げた。五輪のかかる準決勝。「どこかでオリンピックを意識した」と予選のようなジャンプはできなかった。女子では世界初の大技はもろ刃の剣。リスクは承知だったが、五輪出場権のかかった大舞台で、賭けは裏目に出てしまった。

 もともと競泳選手だったが、小学3年から飛び込みに転向した。日体大柔道部だった両親の肉体を受け継ぎ、子供のころから足が強くバネがあった。体脂肪率は男子並みの11%。太ももは競輪選手のような隆々とした筋肉が浮かび上がる。「カンガルーみたいに飛ぶ」と馬淵崇英コーチ。その強靱(きょうじん)な脚力が、世界初の大技に取り組むきっかけになった。

 今年からは技を安定させるため、専属トレーナーと肉体強化にも励んだ。6月の日本室内選手権では、完璧に成功させ、世界大会メダルレベルの400点超えの高得点を出した。自信を深めて世界選手権に挑んだが、世界の壁を崩すのは簡単ではなかった。もっとも、予選では成功させて6位に入ったことも事実。「いつどこで飛んでも完璧にできるようにしていきたい」。今回の五輪切符獲得はならなかったが、来年のリオ、5年後の東京五輪へ、15歳が大きな1歩を刻んだことは間違いない。【田口潤】

 ◆板橋美波(いたはし・みなみ)2000年(平12)1月28日、兵庫・宝塚市生まれ。宝塚小1年の時にJSS宝塚で競泳を始め、3年で飛び込みに転向。御殿山3年だった昨年8月の全国中学大会では高と板の2冠を獲得。同9月の日本選手権では板で、最年少14歳で優勝。直後のアジア大会は高で5位。今年2月の選考会で世界選手権出場権を獲得。4月に兵庫・甲子園学院高に進学。家族は元柔道選手の父秀彦さん(45)母美智子さん(44)と兄。151センチ、45キロ。

 ◆高飛び込み 飛び込み台の高さは10メートル。コンクリート製の飛び込み台からジャンプし、フォームの美しさと正確さを競う。速度は時速50キロ以上。ジャンプは男子6回、女子5回。演技の種類ごとに難易率(点数)がある。1回のジャンプで7人のジャッジが10点満点で採点。7人の採点のうち、上位2人と下位2人を除く3つの採点を合計し、難易率を掛けた値が得点。女子では1回のジャンプで100点を超える選手はあまりいない。女子は5回のジャンプの合計得点で争う。