【ウォリック(英国)4日=岡崎悠利】南アフリカ戦はまぐれじゃない-。日本代表が難敵サモアに完勝し、今大会2勝目を挙げた。FW戦で優位に立った日本は、FB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)のPGなどで前半を20-0とリード。後半も手堅くキックで加点し、危なげなく勝ち切った。直後に南アフリカがスコットランドに勝ったため自力での8強入りはないが、1次リーグ最終の米国戦(11日)へ「ジャパンウェイ」で勝利だけを見据えて突き進む。

 ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は「歴史は塗り替えた」と胸を張った。過去7大会、24試合でわずか1勝だった日本が、3試合で2勝。過去2回W杯優勝の南アに続き、サモアも破った。しかも、この日は内容でも試合を制圧する完勝。リーチ・マイケル主将(26=東芝)は「80分間プレスをかけ続けた。日本のラグビーができた」と、素早い出足でミスを誘い、精神的に相手を追い込み自滅させた試合を振り返った。

 26-5の後半30分、相手陣左中間30メートルで反則を奪った。チームの選択はPGだったが、選手たちの意見は割れた。1次リーグ突破を考えれば、4トライ以上で与えられるBP獲得へトライを狙う選択肢もあった。SH田中も「キックとタッチ(キックでトライ狙い)で、意見は本当に半々くらいだった」と明かした。

 最後はフランカーのリーチ主将が決断した。「勝ちにいくスタンスを変えなかった。サモアはどこからでもトライがとれる」。結果的に五郎丸のキックは外れたが、選手たちの気持ちは再び「勝利」に集中した。試合前、ジョーンズHCが掲げた「勝ち点ではなく、勝利だけを考える」のプランを忠実に実行した。

 過去の反省もあった。07年大会のフィジー戦は逆転負け、11年大会の最終戦はカナダに追いつかれた。相手は個人技一発でトライできるサモア。トライを狙って前がかりになれば、失点のリスクは増える。確実に守り、少ないチャンスに加点。これも試合前、ジョーンズHCが言った「KOを狙わずに、ジャブで得点を稼ぐ」の通りだった。

 直後に南アがスコットランドに勝ったため、自力での1次リーグ突破がない状況は変わらない。南アとスコットランドが残り試合に勝てば、日本は1次リーグ最終戦で米国に勝っても敗退となる。しかし、サモアに完勝して南ア戦がフロックでなかったことを証明した日本が、世界レベルに強くなったのは間違いない。

 W杯史上初めて3勝1敗で敗退となれば、日程や勝ち点制など大会のシステムが再考されるきっかけになるかもしれない。何より、次回W杯開催国として世界のラグビーファン、そしてW杯を主催するワールドラグビーに「ジャパン」の名を知らしめたのは大きい。

 試合後、チームは合宿地のウォリックに戻り、1週間後の米国戦に向けて準備を始めた。目標の「8強入り」は南ア、スコットランド次第。しかし、結果がどうでも、歴史を変えた日本ラグビーが「勝利」だけを目指すのは変わらない。