エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC、55)が、日本代表での最終戦を白星で飾った。最後の米国戦の勝利から一夜明けた12日、英チェルトナムの宿舎で記者会見し、退任が決まっているジョーンズHCは「W杯でのパフォーマンスはずばぬけていた。後悔はない」と感慨深げに語った。

 「しっかりプライドを持って戦おう」。米国戦前、ジョーンズHCはロッカールームで選手たちにこう伝えた。このチームでの試合も最後。指揮官の目には涙が浮かんでいた。堀江は「あんなに涙ぐむところを見たのは初めてだった。選手は気合が入りすぎたかもしれない」。それほど、選手は奮い立った。

 リーチ主将が感謝の思いを口にした。「自分の体がぼろぼろになるまでチームに力を注いでくれた」。毎日、日が変わるまで分析を重ねた。ボーズウィックFWコーチは「もともと分析が好きで相手の映像を何十回も見る。でもエディーさんほどじゃない」と言う。宮崎合宿中には佐藤通訳が「朝5時にはメールが入っていることもある。いつ寝ているんだろうと思う」と明かした。12年には過労による脳梗塞で倒れたが、病室のベッドから指示を出した。「眠らぬ男」と呼ばれる絶対的な指揮官が見せた涙という「人間くささ」が、選手たちの心に響いた。

 米国戦から一夜明け、ジョーンズHCは「W杯でのパフォーマンスはずばぬけていた。後悔はない」と話した。そして19年W杯での8強進出については「難しい。鍵となるポジションに人が足らない」とし、日本ラグビーの現状を「いい企業に入れて、すぐにスタメンに入れて、コーチにはなにも言われない。これでは選手は育たない」と指摘。一方で「能力はある。心構えが大事だ。(今大会で)どれだけ苦労が必要かわかったと思う。そういう選手が育てば、ベスト8は具体化される」とも話した。

 就任から約3年半。戦いを終えたジョーンズHCは、日本人の妻と久しぶりに朝食をとった。日本の勝利のために全てをささげた日々に、後悔はない。「ちょっと変な気分。次の試合に向けて準備をしない朝というのは」と笑った。【岡崎悠利】