重量級の「オオカミ」が目覚めた。19歳のウルフ・アロン(東海大)が、初優勝。圧倒的なパワーとスタミナで勝ち上がり、決勝では残り41秒からの劇的な一本勝ちをみせた。国内シニア大会初タイトル獲得で、来年のリオデジャネイロ五輪代表候補に滑り込んだ。

 先行されても、ウルフに焦りはなかった。決勝戦開始2分過ぎ、下和田に2つ続けて有効を奪われた。それでも「まだ時間はある。必ず逆転できる」。残り41秒、疲れの目立つ相手を強引に内股で投げた。週5日の筋トレ、ベンチプレスで160キロを上げるパワーで五輪をグッと近づけた。

 東海大の上水監督からの指示は、毎試合「3分たってから行け」。最初の3分で圧力をかけて相手の体力を奪い、その後に技をかける。「まるで獲物を追い詰めるオオカミ。最近は地力がついて覚醒しましたね」と同監督は目を細めた。

 7月のウランバートル、10月のタシケントとGP大会2連勝で「外国人にも通用する自信になった」と言う。8月の世界選手権で羽賀龍之介が獲得した金メダルも刺激。「(五輪が)遠くなったかもと思ったけれど、1つずつ勝っていけばリオにつながる」と、五輪へ打倒羽賀も目指す。

 中学、高校、大学の先輩で90キロ級世界選手権代表のベイカー茉秋と同じく父が米国人。「みんなイケメンというわけじゃない。僕みたいなのもいるんで」と笑わせながらも、ウルフの目はリオ五輪をしっかりと見据えていた。【荻島弘一】

 ◆ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日、東京・新小岩生まれ。6歳の時に祖父の勧めで講道館にある春日クラブで柔道を始め、東海大浦安高時代は高校選手権、金鷲旗、高校総体などでタイトルを獲得した。東海大入りした昨年は世界ジュニア3位、講道館杯3位。父は駒大で英語講師を務めるジェームスさん(45)、母は美香子さん(45)。180センチ。ウルフは名字。