早大が後半ロスタイムにペナルティーゴール(PG)を決め、慶大に逆転勝ちした。W杯イングランド大会でトライを決めるなど活躍した早大FB藤田慶和(4年)が大学の試合に今季初出場。エディージャパンや、リオ五輪出場を決めた7人制代表での経験を仲間に伝え、結果の出なかったチームを立て直した。4勝2敗とし、大学選手権出場(5位以内)を確定。来月6日の明大戦(秩父宮)に勝てば、2位となる。

 9点を追う残り約10分、藤田は笑顔で仲間を導いた。「苦しいですけれど、あそこから楽しめるのがラグビーの醍醐味(だいごみ)」。後半22、29分にトライを許し「一瞬死んだようだった」下級生を勇気づけた。「笑顔じゃないと最後まで諦めないプレーはできない。代表で学んだことです」。同35分に1トライ1ゴールで2点差。SO横山の劇的PGにつなげた。

 代表活動で不在中、チームは筑波大、帝京大に大敗した。「自分が立て直したい。それが恩返し」。合流2週間で南ア戦勝利などのノウハウを急ピッチで還元した。メンバー入りの可能性がある約25人が1人ずつ、慶大全員を1人ずつ担当して徹底研究。ホワイトボードに書き出し、情報共有した。エディージャパンが歴史を変えた勝利法。自発的な寮でのミーティングも増え、成果となった。

 「日本代表がなぜ勝てたのか」がテーマの卒論も作成中だ。11年から15年W杯への変化を集約。<1>自信と目標を持てたこと<2>他競技からスペシャリストを招いて理解できたこと<3>日本人の特性を分かったうえで練習を積めたこと、が3本柱。「できるだけ後輩たちに引き継ぎたい」。ノウハウの継承も藤田の願いだ。

 最終戦は明大戦。大学選手権6連覇中の帝京大への雪辱へ、勝って勢いをつけたい。「あまり良くない早大を良い方向にすることが自分の使命。まだまだ伸びしろはありますよ」。大学ラストイヤーを最高の笑顔で締めくくるつもりだ。【鎌田直秀】