7人制ラグビー女子日本代表「サクラセブンズ」が、来年のリオデジャネイロ五輪の出場権を獲得した。1次リーグ最終戦でカザフスタンに敗れたが、再戦となった決勝で雪辱。中村知春主将(27=アルカス熊谷)、山口真理恵(26=ラガール7)を中心に、多彩な攻撃と低く鋭いタックルでアジアを制した。15人制男子のW杯イングランド大会で歴史的3勝を挙げた日本代表に続き、男女の7人制代表も五輪での躍進を目指す。

 金銀の紙吹雪の舞う中、カップを高らかに掲げる中村主将を中心に笑顔があふれた。女子ラグビー界初の聖地・秩父宮での大歓声に多くの日の丸。中村主将は「声が温かかった。グラウンドの選手、スタンドにいたともに戦ってきた仲間。結果でありがとうと伝えることができて良かった。この5年間の苦労が、この一瞬で報われました」。

 勝つか、引き分けで出場権を獲得できた1次リーグ最終戦でカザフスタンに惜敗。再戦となった決勝は22点差までなら負けても決まる条件だったが、「日本らしさ」で勝利にまい進した。レスリング経験者を招いて磨いた低く鋭いタックル。180センチ近い相手に159センチの山口が1人で止めた場面に、観客が沸いた。7-7の同点で迎えた後半8分、食べて鍛えるを繰り返して作り上げた当たり負けない体が生きた。「お願い、トライして~」と願う大黒田のパス。受けた小出が相手タックルを正面衝突で吹き飛ばし、今大会チーム最多の7トライ目を決めた。浅見敬子ヘッドコーチは「私たちは格好いいラグビーはできない。泥くさい戦いができた」と胸を張った。

 リオデジャネイロ五輪の新種目に決定した09年から、本格的な強化が始まった。年間200日を超える合宿を敢行した。日本協会の岩渕健輔GMも「15人制の男子よりも早くから鍛え上げてきた」と話す、早朝の筋力トレーニングに4部、5部練習。一緒に過ごす時間も長く、家族のような関係も築いてきた。

 さらに強固な絆を築いたのは中村主将の「お見合い&ラブレター作戦」だった。選手1人ずつ部屋や近くのカフェなどに誘って「お見合い」。ベテランから若手、新メンバーまで、抱えている悩みやケガの状況、自分が今後どうしていきたいか。時には私生活の相談まで本音を引き出した。その後は「ラブレター作戦」。お見合いから1週間以内には、手紙を郵送。文面でも中村の気持ちや助言を伝え、最後の1文に「リオで金メダルを狙う」と書き添えた。最年少19歳の小出が年長者にもしっかり意見を言える環境をつくり、「最高の家族」を生んだ。

 「ここからがスタート」と中村主将。今日30日には8月に昇格を決めた、世界の強豪が集うセブンズシリーズ出場のためドバイに出発する。来年4月まで全4戦に「いち早く世界のトップ4に勝って、金メダルの道筋をつくりたい」。京大卒の竹内は仲間に「私たちが女子ラグビーのわだちをつくろう」と呼び掛けた。リオまであと9カ月。サクラセブンズの足跡を残す第1歩となった。【鎌田直秀】