柔道界を代表する名物コーチが、この大会を最後に引退した。キューバ女子代表のロナルド・ベイティア監督(68)は、代表指導歴30年。女子が公開競技として行われた88年ソウルからロンドンまで7大会続けて五輪を指揮し、キューバを世界的強豪に育てたが「長い間やっているので、そろそろ辞める時だ。リオまでやると、また次もとなるから今年いっぱいで後進に道を譲るよ」と、人懐っこい笑顔で話した。

 197キロあった体重は、少しスリムになって現在は「160キロぐらい」。コーチ席で巨体を揺すり、派手なアクションで選手を鼓舞する姿は、テレビ画面を通して世界中の柔道ファンになじみになった。親しみを込めた「Fat Veitia(太っちょベイティア)」がニックネーム。健康面を心配する周囲の声に「問題ないさ。元気だよ」と豪快に笑った。

 キューバにもたらした五輪金メダルは5個。銀、銅合わせて実に24個ものメダルに導いた。この日は国際柔道連盟(IJF)から功労賞を贈られ、78キロ超級決勝で稲森に敗れたロンドン五輪金メダルのオルティスと抱き合う姿をテレビカメラが追いかけた。日本女子の南條監督も「今日のオルティスは監督が辞められるということで、気持ちが入っていた」と、偉大な指導者の力を口にした。

 五輪や世界選手権の名物となったコーチ席で巨体を揺らす姿は見られなくなるが「柔道が好きだし、試合は見にくる。もちろん、来年のリオもね。キューバの選手を応援しに行くよ」とベイティア監督。今度はスタンドで、その姿が見られそうだ。