日本代表「ポセイドンジャパン」が、画期的な守備戦術を完成させて08年北京五輪銀メダルの強豪米国を苦しめた。

 試合開始直後から、日本は積極的な守備を見せた。水球の7失点は、十分な合格点。得点の少なさに課題はあるが、志水祐介主将(27)は「守備は100点。完璧にできていました」と胸を張った。

 大本洋嗣監督(48)が構想4年、代表に取り入れて2年でようやく完成の域に達したのは「パスライン・ディフェンス」。通常、パスを受ける相手をマークする場合はゴールとの間に自分の体を入れるように後方から体を寄せるが、あえて相手の前に出た。もし相手にパスが通ればフリーになるが、そのパス自体を通さなくする作戦だ。

 リスクは大きいし、運動量も要求される。さらに、相手を背中に置くからポジショニングも難しい。それでも、大本監督は「同じことを繰り返して五輪に行けなかった。何か新しいことをしないと、ずっとアジアを突破できない」と取り入れた水球界の常識を打ち破る戦術。当初は「みんなやってくれなかった」が、ようやく形になった。

 ゴール数では負けたが、シュート数は日本の32本に対して米国を半分の16本に抑えた。この日4ゴールの竹井昂司(25)は「守備はよかった。あとは、チャンスを確実にゴールすることですね」と話した。この日の試合で、16日からのリオデジャネイロ五輪アジア最終予選(中国・仏山)での打倒中国、カザフスタンへの自信を深めた。84年ロサンゼルス大会以来、32年ぶりの五輪出場が、守備の新戦術「パスライン・ディフェンス」で見えてきた。