今季中にまた「史上初」があるかも!? 12日まで行われたフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルで男子史上初の3連覇を達成した羽生結弦(21=ANA)が15日、開催地のバルセロナから帰国。同大会のエキシビションでまだ誰も試合では成功がない4回転ループの大技を決めたことに対し、今季中の解禁に「要相談」と含みを持たせた。2戦連続の世界歴代最高点を樹立し、進化は止まらない。王者奪還を目指す来年3月の世界選手権(米国)では、新たな挑戦が見られるかもしれない。

 スペインでの会心の演技後にみせた「ドヤ顔」ばりに、羽生がしてやったりの顔をみせた。「良いこと言った! よっしゃ、できた! 素晴らしい! って、素晴らしいと自分で言ってどうする」。冗談交じりに思い切りの笑顔。「できた」のは今年を表す漢字。挙げたのは「成(なる)」。「(織田)信成さんにかけたわけじゃないですよ」とジョークを飛ばしながら掲げた理由が面白い。

 羽生 僕、将棋もやるんですけど、(駒が)裏になることを「成」と言いますよね。ここまで来るのに歩兵のように1歩1歩進んできたと思うので、やっとここまで来られたなという思いと、さらにここから動き始めるところなので、そういう意味でもさらに強くなっていかないといけないな。

 大満足の回答だったが、新たな「成」が今季中に起こる可能性がある。

 13日に行われたファイナルのエキシビション。先月下旬のNHK杯に続く世界歴代最高点をショートプログラム(SP)、フリーで続けて世界を仰天させたが、それだけに飽き足らなかった。フィナーレで満員の観客の前で跳んだのは4回転ループ。ソチ五輪前から習得に励み、14年4月のショーで初成功させていた大技を再び成功させた。

 4回転の歴史は、88年にトーループ、98年にサルコー、11年にルッツと国際連盟公認大会での成功がある。ループはまだ成功者はいない。1種類ごとに10年以上の歳月がかかるほどだが、羽生がそのサイクルを早めるかも知れない。

 本人は「要相談ですね」と今季中の挑戦に言及した。2種類を組み込む現構成でも「いまの自分の最大の難易度」。ジャンプの出来栄えの加点も満点が出ており、「点数差を考え、何が最高の挑戦なのかを考えてやりたい」と見通す。ハードルが高いのは事実だ。

 それでも、時に1段、2段とばしで壁を越えてきた羽生だからこそ、期待してしまう部分もある。25日開幕で4連覇がかかる全日本選手権(札幌)では構成は変えない。「要相談」は年が明けてから。16年はどんな漢字が当てはまる年になるだろうか。【阿部健吾】

<羽生の「史上初」>

 ◆07~08年 中1だった07年全日本ジュニア選手権で3位。ノービス(10~14歳)の選手が表彰台に上がるのは日本男子初。

 ◆09~10年 ジュニアGPファイナルで史上最年少(14歳)で優勝。世界ジュニア選手権では日本男子初の中学生での優勝。

 ◆10~11年 4大陸選手権で2位。男子で同大会史上最年少(16歳)のメダリストに。

 ◆11~12年 初出場の世界選手権で3位。日本男子最年少となる17歳3カ月での世界選手権メダル獲得。

 ◆13~14年 ソチ五輪SPで初の100点超えとなる101・45点を記録。金メダルは日本人、アジア人で初。平成生まれの日本人として初の五輪金メダル。

 ◆14~15年 GPファイナルで日本男子初の2連覇。

 ◆15~16年 NHK杯フリーで初の200点超えとなる216・07点を記録。合計も初の300点超えとなる322・40点。GPファイナルで男子初の3連覇。