2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が設置した外部有識者チームが18日、盗作疑惑で白紙撤回となった佐野研二郎氏(43)のエンブレムを決定した選考過程について調査報告を行い、1次審査で招待デザイナー8人全員を通過させるため不正投票があったことを明らかにした。審査委員も務めた元組織委職員が最終審査まで、招待デザイナーの作品が誰のものかを知りながら審査していたことも報告した。

 佐野氏を含む招待デザイナー8人のうち、2人が1次選考(104→37)で落選危機に陥った。1次審査の時間切れ寸前の場面。審査を記録した映像を見た調査チームはここに注目した。事実上の更迭処分となった組織委元マーケティング局長の槙英俊氏と元クリエーティブディレクター兼審査委員だった高崎卓馬氏(ともに出向解除で電通に帰任)が、座って雑談していた審査委員代表・永井一正氏に歩み寄り耳元でささやくシーンだった。

 委員1人の持ち分はチップ20枚(票数)。永井氏は余っていた10枚のうち、2枚を落選危機にあった招待作品に置き、意図的に通過させた。1次は2票で通過でき、2作品は永井氏が投票するまで1票だった。2作品は14作品に絞る2次審査で落選した。

 72年札幌五輪のエンブレムを作成するなど業界をリードしてきた永井氏にとって、業界の常識でもある招待コンペは当然という意識があり、調査チームの和田衛弁護士は「槙さん、高崎さんは不正を認めたが、永井さんは1次審査は無条件で通るべきだと確信しているので違法性の意識はなかった」と話した。

 高崎氏は招待者8人の図案も把握。「14→4→1」と絞った最終審査では高崎氏が司会進行を務めた。特に1~3位は議論で決めたため選定への影響も考えられ、報告書は「公正性に対する疑念を招く」としたが、和田氏は「2時間近い議論があった。高崎さんだけが知っていても影響はなかった」とした。調査チームは佐野案が1位になったことに、これらの不正が影響しているとは考えにくいと結論づけた。【三須一紀】