男子SPで4連覇へ首位発進した羽生結弦(21=ANA)が、粋な心遣いをみせた。「みんな、見たいですよね」。自分の演技が終わり、取材エリアにきてテレビの質問を受けながら、チラチラと目線を送っていた先は、中継を映すテレビ画面。羽生の2番後の滑走順だった宇野昌磨(18)の演技が始まろうとしていた。そこで一言、だった。「昌磨が終わったらまたきますよ」と1度取材エリアを後にし、その言葉どおりに数分後に戻って取材を受ける姿があった。

 この日の自身の演技では4回転サルコーで転倒する失敗があった。精神面の課題を自ら「リラックスし過ぎなのかな」と分析し、「それが良いのか悪いのかを考えたい」と振り返ったが、演技直後にあたかも俯瞰(ふかん)的立場から自分の心身の状況を振り返れることも、実力の一部なのだと思う。

 それは演技以外でも同じなのだろう。自分の事に集中しすぎず、状況を鋭く把握して動く。この日の「気遣い」1つからでも、その強さの秘訣(ひけつ)を感じさせた。