2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は7日、新しい公式エンブレムを選ぶため本格的な審査を開始した。エンブレム委員会は、1万4599作品から昨年末までに絞った64作品を9日までに、3~4作品まで絞り込む。審査直後、杉山愛委員(40)は「素晴らしい作品ばかりで甲乙付けるのが苦しい作業でした」と語った。

 杉山委員と同じ時間帯には他2人の委員も審査に臨んだ。佐野研二郎氏(43)の作品が選ばれた旧エンブレムの1次審査では、組織委側と審査委員代表・永井一正氏が相談し、招待デザイナーの作品を不正に通過させたことが発覚した。杉山委員は今回の審査について「部屋で(他の委員と)すれ違うことはありましたが、目線すら合わせず緊張感があった」と“ガチ審査”を強調。他の委員の採点動向も分からないという。

 今日8日までに21人の全委員が「3・1・0」点の3段階で評価し、原則として合計点数が高い30作品程度が次のステップに進む。杉山委員によると組織委から採点基準の提示はなく「絶対評価」だという。判断基準について「日本らしさもありつつ、グローバルという視点も意識しながら世界の中に入っても、かっこいい、迫力のあるものを選んだ」と明かした。

 審査会場には、五輪とパラリンピックの作品を対にして印刷したA2版の紙を64枚掲示。その下にタイトル、コンセプト、展開例が貼ってあり、それらを読みながら、各自のシートに採点を書き込む方式。

 3~4作品は国内外の商標調査・登録をする。それらを国民に公表し「国民参画」を行うかは9日のエンブレム委員会で決定する。3、4月ごろに採用1作品を発表する。

 ◆主なエンブレム委員会メンバー(敬称略) 今中博之(素王会理事長)、榎本了壱(クリエーティブディレクター)、王貞治(ソフトバンク会長)、柏木博(武蔵野美術大教授)、勝井三雄(グラフィックデザイナー)、志賀俊之(日産副会長)、杉山愛(元プロテニス選手)、田口亜希(パラリンピック射撃日本代表)、但木敬一(元検事総長)、田中里沙(宣伝会議取締役)、中西元男(デザインコンサルタント)、林いづみ(弁護士)、松井冬子(日本画家)、山本浩(法大教授)

 ◆エンブレム問題 昨年7月24日に発表された佐野研二郎氏デザインのエンブレムはベルギーの劇場ロゴに似ていると指摘され劇場側が使用差し止めを求めて提訴。佐野氏は盗用を否定したがイメージ低下を懸念した大会組織委員会は同9月1日に白紙撤回を決めた。