ラグビーのW杯イングランド大会日本代表のFB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)は5日、加入するスーパーラグビー(SR)のレッズ(オーストラリア)に合流するため、成田空港から出発した。今季のトップリーグでは83得点(2トライを含む)を挙げて3季ぶり3度目の得点王に輝いたが、SRではメンバー入りを懸け、厳しい競争からのスタートになる。出発前の記者会見では弱気とも取れる発言で、危機感を募らせた。

 会見冒頭、航空会社からカンガルーのぬいぐるみをプレゼントされると、五郎丸はニコッと笑った。それが、SRへの質問に答えるにつれて顔に緊迫感が帯びていく。

 目標を聞かれ、具体的な数字どころか、厳しい見通しを口にした。

 五郎丸 目標はまずジャージーを着ること。皆さんに期待していただいているが、SRは簡単なものじゃない。失敗や苦しい思いをする中で、1日でも早くチームの力になれるよう努力したい。競争は高い壁。ジャージーを着られずに帰ってくるシチュエーションもあると思っている。

 まずは練習から自分の力を首脳陣、チームメートに認めさせなければならない。五郎丸は「ゴールキック、ペナルティーキックは要求されると思う。そこで得点にからんでいきたい」と言った。まず、キックで状況を切り開くしかない。

 五郎丸 このままヤマハ発動機に残って、他のチームにチャレンジしなければ、ポジションは確立した状況になるが、ポジションが確立されていない(レッズに)チャレンジをすることは、今後のラグビー人生で大事。その中で失敗をたくさんしたい。

 さらに昨年12月のトップリーグで右手甲を痛めたことも不安材料だ。「向こうでメディカルチェックをしっかりした上で、万全な状態で臨みたい」。1月中旬のイベントでは握力が戻っていないことを認めており、ハンドリングへの影響が考えられる。ライバルと競り合う前に、今は練習に耐えうるコンディションを証明するしかない。

 夜にはブリスベンに到着し、そのまま練習試合を見学。8日に入団会見に臨む予定だが、それ以外は少しでも早くコンディションを整え、環境への順応に専念する。観光地としても人気のブリスベンで、どこに行ってみたいかと聞かれると「遊んでいる暇はないと思います。練習します」と、強い口調で決意を示した。真夏のブリスベンは、五郎丸にとって試練の場所になる。【井上真】

 ◆スーパーラグビー 南半球の強豪国ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカなどに拠点を置くチームが争うリーグ。96年に「スーパー12」として12チームで始まり、チーム数は06年に14、11年に15と拡大し、今年から日本の「サンウルブズ」などが参入して18。2月26日に開幕し、7月15日までレギュラーシーズン15試合、各地区優勝の4チームとワイルドカード4チームがプレーオフに進出。決勝は8月6日。昨季はSH田中(パナソニック)のハイランダーズが優勝した。

 ◆クイーンズランド・レッズ オーストラリア・クイーンズランド州ブリスベンのサンコープ・スタジアムを本拠地とするクラブ。「スーパー12」が始まり、クラブと選手が契約する形の現在のレッズが誕生した96年が創設年とされる。SR初参戦の11年に優勝。